些細な人々の話をしよう。

星野 驟雨

第1話 かくれんぼ

「本日未明、白骨化した遺体が発見されました」

身元がわからずに発見された骸骨は胸の前で腕を折っていた。


「これどうなんですかね。殺人にしては格好がおかしいと想うんですが」

「たしかに、だが埋める際にこうしたとも言い切れん」

その声は私の身体を伝う。振動となって私のなかを駆け巡る。

私は殺された。たしかにそれは事実だ。

「にしてもなんで今発見されたんでしょうね。白骨化するくらい時間があったのに」

「それはなんだ。うまく言えんがなんだ」

なぜ私は見つかってしまったのだろうか。これではあの子との約束が果たせない。心などとうに地中に解けてなくなってしまったが、それだけは思い出せる。


「なあ、かあちゃん。本当にいいのか」

「ああ、いいさ。もう十分」

「なあ、かあちゃん。本当にいいのか」

「ああ、いいさ」

「なあ、かあちゃん」

「どうしたさ。これはかくれんぼだよ。昔やったじゃないか」

「なあ、かあちゃん」

「いいんだよ。あんたが鬼だよ」

「なあ、かあちゃん」

「いいから貸すんだよ。かくれんぼ、私が隠れるから目を閉じてさ」

「なあ」

「私は誰よりもかくれんぼがうまいんだよ。だから私を見つけられないだろうね」

「いいんだよ。いいんだよ。10数えたら私が昔掘ったこの穴を埋めるんだよ」

「わかった」

「よし。いい子だ」

「じゃあ。10」


あぁ。見つかってしまったな。これじゃあかくれんぼ名人じゃあないじゃないか。

あの子はかくれられたかなあ。私の子だから大丈夫かなあ。

見つかっちゃった。かくれんぼ、おしまいかあ。

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