into the rain

𝚊𝚒𝚗𝚊

0 ジュン

 国道一九号線を北進。路上駐車の車両を避け、舗道に単車を寄せた。

 雨は煙草を濡らすか濡らさないか程度。空は雨雲が続いているけれど、明るくて、雨は冷たくても煙草を消さない程度。空の色のフォルクスワーゲンがクラクションを鳴らして通り過ぎた。


 一九号線を右折して、四一号線へ。東新町交差点を右折。雑居ビルの階段を二階に上がる。ボーイに呼ばれてカーテンを潜る。すぐそこに女の子がにっこり笑って立っている。廊下の両側に同じ形のドアが並んでいた。個室の奥のシャワールームに入る。


「綺麗な図柄だね」


 濃い紫色のタオルで俺の体を拭きながら女の子が言った。


「まだ途中なんだ」


 腕と脇腹に跨がる龍が背中の虎に絡まっている絵には色が入っていない。頼まれて断れずに彫師の名前も彫られている。


「これとこれ。正さんの師匠に彫ってもらったんだよ」


 そう言う女の子の肩とももには綺麗な色が入っている。


「このコーラさあ」


 紙コップに少し残っていたコーラを飲み干す。


「ペットごと持ってこれん?」


「そんなにコーラ好きなの?」


 素肌にタオルを巻いただけの女の子はベッドから立ち上がって笑った。


「今日はコーラでも飲みながら話しとらん?」


「何もしないの?」


 今度は少し困った顔で笑った。


「かわいすぎる」


「えー?」


「写真もかわいかったけど。写真写り悪ぃんだね」


「そーかなあ?」





 コーラのペットを持ってきた女の子は一緒に持っていた財布から万札を二枚出した。


「返すで、話そぉよ」

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