生まれる?
【夫のターン】
そろそろ出産日に入ってきた。携帯の充電を常に切らさず、充電器も3個常備。
♪♪♪
『ドドンガドンっ! ドドンガドン!』
なのに、来るのはこんなメール。
あのバカ。
『なんでそんなにふざけられるんですか? もう生まれそうなんだから、真面目にしてください。真面目にしてください」
大事なことだから2度書いた。
♪♪♪
『ごめーん』
まったく。
♪♪♪
『ドドンガドンっ! ドドンガドン!』
……あのバカ。
♪♪♪
「もしもし、修ちゃん?」
「なにを考えている」
「エヘヘ……メール見た?」
「見たよ!」
なんなんだあの意味不明な太鼓メールは。
「私がいなくて寂しいかと思って! 枯れ木もうんだらかんだらって言うじゃん!」
「使い方も間違っているし、うんだらかんだらの方が文字数長いけどな!」
枯れ木も山の賑わいな。
「エヘヘ……元気?」
「……まあまあ元気。そっちは?」
「私も……まあまあ元気」
「……」
「……」
メール以外で話すのは久しぶりだったから。
ちょっとだけ話すのが照れくさい。
たまにしかない一人暮らしを満喫してもいたけど。やっぱり、妻と娘のいない生活なんて。
「……う」
「う?」
「生まれ……そうかも……」
なに――――――――――――!?
「ちょ、お前、今どこ!?」
「家……」
「お義母さんはいるか!? お義父さんは!?」
「……いる」
「ちょ、ちょっと待ってろ!」
すぐにお義母さんに電話を入れる。
♪♪♪
「あっ、もしもし。修君」
「お義母さん! 理佳が生まれそうだって」
「ああ、はいはい」
は、はいはい。
「いや、ホントですって! ホントなんですって!」
「修君、君は正直者だから、そうやって妻のいつもの嘘に付き合ってくれて。お義母さん、あなたみたいな息子を持って――」
嘘確信―――――――!?
「いや、ホントなんですよ! ホントに苦しそうで!」
「またまたー!」
お、恐ろしい……どうなっとるんだこの家族は。
「とりあえず理佳見に行ってください!」
「もー、心配性な息子でお義母さん……あら、やだホントに痛そうね」
「ほら――――――――――――――!」
理佳、大丈夫か――――――!
「まあ、前もそうだったけど安産型だし。落ち着いて。救急車呼ぶから。いつもの病院で。あんまり急いでも、アレだし」
「くっ……」
アレってなんだ。実の母親だったらぶん殴ってるぞ。
とりあえず、病院に直行した。
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