キラキラネーム(男の子編)
【妻のターン】
「ねえ、修ちゃん修ちゃん!」
「……なんだ」
「テンション低いなー。そんなことじゃお腹の子が悲しむゾ」
「その理由を教えてやろうか? 平日の午前5時にお前がお腹の上に乗っているからだ」
ああ。この不機嫌そうな顔も可愛い。
「私、考えたんだけど」
「……どうせろくでもない考えなのだろうが、いいよ。言ってみろ?」
「ヘヘ……ババ―ン」
「おい……紙が今にも俺の眼球に密着しようとしてなにも見えない」
「もう! ワガママだなー」
「……」
夫のテンションが低い。なんならもう眠ってしまいそうだ。
それは哀しいので、スーッと和紙を少し離す。
「……雑草。なんだそれは?」
「生まれてくる男の子の名前」
「おやすみ」
ちょー――――――!
「修ちゃん修ちゃん修ちゃん!」
「あ―――――! なんなんだ、寝かせてくれよ! 眠いんだ!」
「子どもの名前と修ちゃんの眠気、どっちが大事なのよ!」
「この状況においては、間違いなく眠気を取る」
「人でなし!」
「うるせーバカ!」
妊婦なのに。
「……私、妊婦なのに」
「だからって、なんでもワガママ言っていいわけじゃないことを自覚しろ」
「お腹の赤ちゃんが……遊びたーい。パパ、遊びたーいって」
「……お姉ちゃんに遊んでもらいなさい」
横を見ると、凛ちゃんがスヤスヤ。一向に起きる様子はない。この子は心臓に羊毛が生えている。そして、強引に起こそうとすると、生ごみを見るような目で睨まれる。
我が母ながら、末恐ろしい娘だ。
「修ちゃん修ちゃん修ちゃん!」
「あああああ、うるせーな」
やっと起きてくれた。
「ねえ、名前。これでいいかな?」
「いいわけないだろうおやす――「修ちゃん修ちゃん修ちゃ――「あああああうるせえなあ!」
寝かさない。こうなれば、私も意地だ。
今日は、仕事に行くまで、寝かせません。(キリッ)
「ダメだろ! 雑草なんて名前」
「じゃあ、なんて名前がいいの?」
「うーん……」
「ふっ……案を持たぬ者は、案を持って提案する者を批判する資格なし」
「うるせえよ! 2秒考えただけで、すぐにパッと浮かぶかバカ!」
「子どもの名前なんて365日全力で考えてしかるべきでしょバカ!」
「ああそうかお前は365日全力で考えて雑草と言う名に行き着いたわけだな、変えろ超絶バカ!」
はぁ……はぁ……
「あったまってきたね」
「お前があまりにもワガママすぎてな」
「テヘッ♡」
「褒めてねーよ!」
そんなこんなで、名前論争は激しくなっていった。
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