出来ました

【夫のターン】


 ふぅ……今日も仕事が疲れた。俺の上司とその上の上司は仲が悪い、そして、上司の上司とその上の上司も中が悪い。結果、雰囲気最悪……俺にどうしろってんだ、


「ただいまー」


「お・か・え・り、アナタ♡」


「……なにを企んでいる?」


 思わず数歩後ずさる。


「エヘヘー、別に」


 可愛くウインクをする妻に、罠だとわかっていても思わず見惚れてしまいそうになる。


「……なにが欲しいんだ?」


 いや、もしくはなにをすでに購入してしまったんだ?


「欲しいものは、修ちゃんの愛情。そして、もう十分に貰っているわ」


 あ……怪しい。怪しすぎる。


「……まあ、いいや。ご飯作ってくれ」


「はいなー!」


 元気よく、意気揚々と跳ねるように台所に飛んでいく妻。見れば見るほど、猜疑心しか湧いてこないのだが、妻の悪事を防ぐ手立ては皆無なので、もはや流れに身を任せる。


 トントントン


 心地よく包丁音が響き、鼻歌を歌う声が聞こえてくる。むしろ、これだけ怪しすぎれば、逆に怪しくないのだろうか……なんにせよ……可愛い。


「できたよー、修ちゃん。凛呼んできて?」


「お、おお」


 言われるがままに、お城の模型を難しい表情で作っている娘を抱っこして食卓へ。凜は尋常ならざる手先の器用さと頭の良さを見せ、なぜか幼稚園児にして大人の模型を組み立てにかかるという末恐ろしい娘だ。


「「いただきまーす!」」


 みんなで手を合わせて行儀よく声をあげる。


 食事もいつもより豪華。サラダに、コロッケ、味噌汁。そして、普段はつかないから揚げが。


「里佳……なにかあったのか?」


「んーっ、ふふふふ」


 なにかあったんだ……絶対になにかあったんだ。


「そろそろ教えてくれよ。もったいぶってないで」


「えー……どーしよっかなぁ」


「凜ちゃんは知ってるのか?」


「知らなーい」


 ふむ……娘も知らないってことは……


 !?


 ちょ、ちょっと待て。ええっと……ええっと……2……3……4…………!?


「り、里佳……もしかして……」


「えっ、わかっちゃった?」


「……でき……たのか?」


「……」


 妻は小さく頭を縦に振る。


「ほ、本当か?」


「……うん」


「俺たちの……子どもが?」


「凛ちゃんの欲しがってた弟だって♡」


「……やったぁ――――――!」


 思わず叫んで立ち上がる。


「ええっ!? 凜の弟ができるの!?」


 凜もはしゃいでぴょんぴょん飛び回る。


「ああ、そうだ。やったな、里佳」


「ここでもう一つの発表です!」


「……嘘だったら殴る」


「こ、こわっ!? さすがはDV夫」


「誰がだ嘘つき妻!」


「ご心配には及びません。もう一つは、家庭の事情により、修ちゃんのおこずかいが減ります!」


「ええっ!?」


 減らされるほど持ってないような気もするが。


「我慢我慢」


「……お前も節約するんだよな?」


「妊婦に我慢は禁物♡」


「自分で言うな! まあ……いいけどな」







 その日は、家族みんなで踊りまわった。


 

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