キラキラネーム2
【妻のターン】
「全然譲らないね」
「当たり前だ! 譲ってたまるか」
もちろん、わたしも最初は冗談だったが、これだけ必死になってくるのならば、必然的に私もそれに応えなければならない。
場合によっては、その名前、つけさせて頂くほどの覚悟。
「
「女の子だって言ってんだろ! だいたいなんなんだその欲望丸出しな名前は! 俺たちバリバリ中堅私立なのに……どーやって説明するんだ!」
「世の中弱肉強食……バカとブスほど、東大に行け!」
「漫画とドラマに影響されすぎなんだよ! そもそも、バカかブスかもまだわからんだろうが!」
「もし、修ちゃん似だったら――「うるせーバカ!」
はぁ……はぁ……
『和震』
「……どーせロクでもないと思うが、なんて読むんだ」
「ワッフル」
「誰が読めるんだよ! 毎回先生に聞き返させる気か!」
「今の時代、当て字は当たり前だから問題ないよ」
「ああすまなかったなそういう問題じゃなかった変えろバカ!」
「美味しそうじゃない!?」
「娘を食べてくださいとでもいう気か!」
た、たしかに……
「じゃあ、ばななとか林檎とかもダメだね。そらそうだよね。いくらなんでも食べ物の名前をつける人なんてどうかしてるわよね」
「お……俺が吉本ばなな先生と椎名林檎ファンなの知っていてそういうことを言うんだな貴様は! ばななも林檎もいいんだよ!」
「なんで!?」
「自分で考えろ!」
ふーむ……しかし、桃とかも名前で多いしな……
『芒果』
「……ほぼ、嫌な予感しかしないがどうやって読むんだ?」
「マンゴー!」
「正気か!?」
「なんでよ! 修ちゃんも好きじゃない!?」
「……ちょっと一回深呼吸させてくれ。怒りを抑えてたい」
「どうぞ」
スー……ハーっ……
「……ごめんもう一回」
「いくらでも」
スー……ハーっ……
「待たせたな。なあ、マンゴーは危険だよ。色々な意味で」
「どういう意味?」
「……とにかく、なし」
・・・
『梨』
「俺が言ったからか!? 俺が『なし』って言ったからか!?」
「まあ、『なし』って読まないんだけどね」
「……他になんて読めるというんだ」
「ゼロ」
「アホか!」
「なんで!? カッコイイじゃない、ゼロなんて」
「ゼロだったら零だろう普通! 梨をゼロなんて読んでもカッコイイーとかなるか!」
「じゃあ、零」
「だから女の子だろうが! 次!」
『葡萄柚』
「き、貴様……グレープフルーツちゃんとでも呼ばせる気か!?」
「大丈夫! 多分アダ名でグレープちゃんかフルーツちゃんになるから!」
「長い! アダ名でも長い! 次!」
「ええっと……」
「ちょっと待て。今から書く名前はなしな」
『はっさく』『パイナップル』『アセロラ』『いちじく』『柿』『さくらんぼ』『アボガド』『すいか』『すもも』『パパイヤ』『パッションフルーツ』
「……じゃあなにがいいのよ!?」
「てめえの頭で考えろバカ!」
『甜瓜』
「……メロンかぁ。まあ、悪くはないとは思うけど」
「やっぱりやめた」
「なんでだよ! こんなこと言うの不本意だけど今まであげてきた名前の中では上位だぞ!」
「修ちゃんみたいに……果物を差別したくない」
「……ぶん殴るぞ貴様」
はぁ……はぁ……
「わかりました。食べ物シリーズはあきらめます」
「別にあきらめないでもいいが、普通の名前にしてくれ」
「お腹すかない? ドーナツ食べる?」
「……食べるか」
もぐもぐ……もぐもぐ……
「ねえ、修ちゃん。ドーナ――「ダメに決まってるだろうが!」
*
現在
「ってなことで結構揉めたのよ。それから二日ぐらい、言い争いしてて」
「どっかのおバカさんのせいでな」
修ちゃん……失礼。
「ふーん……で、なんで凛なの?」
「「え゛っ……」」
二人とも、思い出せずに、娘が泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます