硝煙を見た事の無い僕が硝煙を語らねばならない現実を笑ってくれ

編現病来

第1話 僕の趣味を伝える事があの子に対するアプローチ




 へへ、にやけて笑う。醜悪に笑う。あの少女を舐めて、噛んで、凌辱したいと小声で言っている。見紛う事なき変態生物その名を、ピンボールおじさんこと、紙片分離だった。ピンボールおじさんはピンボールではない、人間はピンボールに成れないからだ。

 まあピンボールおじさんみたいに幼女の頭蓋をくり抜いて、ピンボールに加工することは出来ないことも無いが、それは幼女では無く骨なのでピンボールおじさんはピンボールでは無いと言える。


 さてと、ピンボールってなんだっけっか。ウィキで調べてもいいが、しかし僕は今、スマホを持ち合わせていない。笑ってくれ、ピンボールおじさん。僕は文明の利器を持ち合わせないという愚行を犯した、自分の不注意だ。怒ってくれ。

 

 怒ってくれよ、そしたらピンボールおじさんが見ている幼女を誘拐しようとしている状況を怒ってやる。一般的道徳を僕は持ち合わせている、その誘拐を止めるため警察に電話をしてから、幼女を出口まで手を引き誘拐しようとするピンボールおじさんを殴った。


 おじさんはデブだ、対して僕は筋肉隆々の190センチという体格、結果としてまるでピンボールのように跳ねた。面白い、というかこの光景こそ僕がこの紙片分離をピンボールおじさんと呼ぶ理由だ。


  僕は過去、正確には今と言い換える事も出来るが、しかし僕の記憶に存在する列としてそれは奥の方に有る事なので過去と呼ぶことにするが、ピンボールおじさんの誘拐現場を目撃した。

 がしかし、僕はそれを誘拐だと分かっていながらも知らぬふりをした。

 結果はお察しのところで、少女は極めて奇怪に、残酷に、四肢と指、皮膚、骨、内臓を全部取り分けて殺された。

 何故僕がその詳細を知っているかと言うと、その死体は僕の住む借家の傍の公園のジャングルジムの網目の真ん中に有って、僕がそれの第一発見者だからである。

 

 中を開けて、うわあと言った後、どんな死体なのか興味が沸いたのでそれを漁って広げていると通りかかったおばさんに見られた。通報された、仕方ない事だ、今はそう思う。警察は僕を手錠で拘束し、署に連行。必死の弁明を続け、昨日思い当たった事件を説明すると、話が分かる方でピンボールおじさんの家を捜索したところ血痕多数で、即日僕は保釈。おじさんは逮捕された。


 しかし署内を出ると目が眩み膝から崩れるとあら不思議、過去に戻っている。さて、それから何回繰り返したか。過去には少女を自分で誘拐し僕が逮捕された後、殺された。

 またはおじさんを殴って遊んだこともある、それがピンボールおじさん由来だ。しかし僕が逮捕されて、おじさんが幼女を殺して逮捕されたとの話を看守に聞かされ、た後に、僕はその誘拐現場。古びた時代遅れのゲームセンターに立っている。


 どんな手を講じても幼女は死ぬので、今回はおじさんを殺す事にした。

 百発は超えたあたり、汚らしいうめき声も止み、周囲の店員も僕を止めることは出来ない。辺りにはゲームセンターの妙な機械音が響いている。静寂だ、そのままの形、それこそが僕にとっての静寂なのだ。


 おじさんの顔は原型を留めていない、元から崩れていたというのは事実だが、鼻が平面になるくらいに殴った。汚い、赤黒いどろどろとした不摂生の証拠と見て取れる血が僕の拳と衣服を染めている。



 やった、僕のタイムリープは此処で終了した。

 僕は逮捕された、おじさんは死んだ。

 目が眩んだ、戻った。


 泣きたい、もはや選択肢は二つ。

 自殺と、幼女の殺害だった。


 幼女の首を掴んだ、ひうっ、叫び声になる間もなく首の骨と発声器官を破壊する。


 どさっと眠りに着くかのように年端もいかぬ少女は無力にもまた死んだ。


 目が眩むことはない、その状況に目が眩んだ。

 このままでは犯罪者だ、というか犯罪者そのものだ。

 

 だが突然、天井が爆散し、トタンと鉄柱が崩れて落ちる。おじさんは何とも偶然、それに貫かれて死亡する。火が降って来た、辺りを燃やしている。僕は外を見る、何処もまた崩れる建物と炎が立ち上がるのみ。人々は言葉にならない叫び声をあげるが天から降る焔になすすべも無く、とろけた。


 崩壊する世界、火の海、僕はその中を闊歩する。


 

 

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