ユメウツツ
Ryo
第1話 ユメ
日本文化を象徴するような家屋が立ち並ぶ場所を、【 】を探して駆け回る。
今の鬼は私。早く次の子に触らなければ、また私で終わってしまう。
夕方の路地裏は少しだけ暗くて、でも不安を覚えることもない。
ただ日が暮れたら終わりの鬼ごっこ。今日こそは負けられないと、焦りばかりが大きくなる。
遠くから聞こえる女の子と男の子の笑い声。きっと私をからかっているのだと思うと、更に負けられないという気持ちが強くなる。
【 】に触られたから、今度は【 】に触らなければならない。それが私達の鬼ごっこのルール。
鬼ごっこというよりはかくれんぼのように、2人の姿を探して走った。
「ほら、こっちだよ!」
「早く捕まえないと、今日も負けちゃうぞ」
今度は別々の方向から聞こえた2人の声。【 】の声が近くに聞こえ、突き当たりの角を曲がると、そこに笑顔で立っていた。
「俺は駄目だよ?」
「分かってるもん」
ムスッとした表情で言う私に、【 】は楽しそうに笑い私の頭を撫でた。
「そうか、なら俺の手助けはいらないかな」
「え、手伝ってくれるの⁉︎」
「全然見つけられないから、今日は特別」
そう答えた【 】に手を引かれ、彼に続いて私も進む。
しばらくすると私達に向かって駆け寄ってくる足音が聞こえ、【 】は私に近くに隠れるよう言った。
私が物陰に隠れた瞬間、【 】が曲がり角から現れた。立ち位置は、私の前に彼女が背を向けている状態。
「ねね、また私の勝ちかもよ」
「ハハ、それはどうかな?」
「へ?」
その時、【 】と目が合った私は、物陰から飛び出して【 】の背中に触れようと手を伸ばしーーー。
ーーーコンコンッ
「真里ー、そろそろ起きなさいよー」
聞き慣れた声に、私の意識が覚醒していく。
カーテン越しに差し込む太陽の光に、朝になったのだと理解する。
モゾモゾと布団から上半身を起こし、時計を見ると7時15分。いつもより15分の寝坊だ。
着替えるためにベッドを下り、制服のかかったハンガーに手を伸ばした。
「………変な夢だったなぁ」
ユメウツツ Ryo @neon_ryo
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