第10話 愛犬たち(7)

 2013年となり、我が家は新しいポメを家族に迎えることになった。妻の念願である多頭飼いを実現するためである。その名は雛ちゃん、”すう”という呼び名が好きな妻が、漢字を探し回ってつけた名前だ。小さな女の子で、生後半年経つのに体重は、標準の半分以下の1.2キログラムしかない。極小というやつだ。京都のブリーダーさんのところから、飛行機に乗って来た。小さい子は希少で、好まれるはずなのに、半年家族に迎えられなかったのはなぜだろうと少し疑問だった。健康チェックは問題なし、元気も有り余っている。食欲も旺盛。


 しばらくたって、少し原因らしいものが分かった。なかなか家族に馴染まない、他人はなおさらである。宝ちゃんは、どうみても笑顔らしい可愛い顔をするし、人も犬も大好きな”お犬良し”なので、どこに連れて行っても好かれたが、雛ちゃんは可愛いと手を出すと噛みつこうとする始末、元々可愛い顔立ちをしているのに、ぶすっとして愛嬌もない。心を開かないくせに、噛みつき方を知らない倍の大きさの宝を、追いかけまわり喧嘩を仕掛けていった。これじゃあ、反抗期の小さなヤンキーである。

 妻は気にする風もなく、服を作っては、宝と雛に着せて遊んでいた。半年もすると、鄒もやっと心を開くようになり、宝の相棒としてイベントなどにも出かけるようになった。相変わらず、人は苦手だったが。

 鄒を迎えるにあたって、病気予防の意味もあり、宝は去勢した。後々、このことで、妻は早まったと後悔することになる。


 私は再び転職し、今度は人材派遣会社で、中小企業庁からの委託である、企業に就職できていない新卒者を実習生として送り込むというプロジェクトを任され、一人で企業と実習生の同時募集を行い、忙しい日々を送っていた。企画運用管理を、一人でこなさねばならないので大変だったが、遣り甲斐があった。一日中、県内各地を車で走り回り、知り合いも大勢できた。結果、社長も目を見張るような実績を上げることができ、1年後にやってくる東京での求職活動を、スムーズにしてくれた。

 このころ、私はおぼろげに確信した。どうやら、”人生は、ある程度、定められているらしい”ことを。

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