9#風船割りカラスジョイの思いを継ぐ者

風船割りカラスのジョイは、『渡米』する前に番を見つけて子孫を残した。

 

『風船割り』を受け継ぐ後継ぎを残す為に。


その1羽が、『ビオレ』という名の雌カラスだった。


ビオレは、親カラスのジョイのDNAを色濃く受け継ぎ、ゴム風船を道端で拾っては巣にコレクションしていた。



 

・・・ひとりだちして、ビオレちゃん元気かなあ・・・


・・・どういう『帰国』の仕方をしようかなあ・・・


・・・そうだ・・・!!




 「これ、ビオレちゃんが毎度ゴミ捨て場でちょくちょく拾ってた『ふうせん』なの?」


 「うん!みんな!黙って隠してごめんね!!怪しかったでしょ?!わたし、『ふうせん』大好きなの!!」




・・・ビオレちゃんと、その仲間の声だ・・・




カラスのジョイは、気合いを込めてプープー膨らませた大きめの黒いゴム風船の中に入っていた。


嘴や鉤爪を風船の表面に触れないように気を付けて、萎みそうになった時のみ息を吹いて、じっとこらしていた。




 「ふーん。」


 「何であなた、『ふうせん』好きなの?」


 「だって、わたしのパパは・・・」




 ・・・きた・・・!!




 「あーーーっ!!」


 「ビオレ、もしかして・・・」


 「そうよ!ピンポーン!!大当たり!!」




 ・・・拙者のことだ・・・!!



 

 「やっぱり!!君のパパは、かつて100万個もの空に飛んでいる風船を、嘴や脚の鈎爪で華麗にパンパンパンパン割ってきたあの伝説の『風船割りカラス』のジョイさんだ!!」


 「えーーーーーっ!!」


 「あ、あの・・・体が100倍に膨らむカラスの??」


 「『ふうせん』を100倍に膨らませるカラスの??」




 ・・・ズコー・・・!!




 「全部ちがーーーーう!!」




 カラスのジョイはたまらなくなって、黒い風船に入ったままチョコチョコと移動して言った。




 「その声は?!」


 「あれ?こんなとこに大きな黒い『ごむふうせん』・・・?!」





ぷしゅっ!ぷしゅっ!ぷしゅっ!ぷしゅっ!



 

 ・・・やば・・・空気が漏れてきた・・・!!




 「ん・・・んんんんん・・・!!」



 ・・・もいいや・・・


 ・・・ええい・・・!!



 ぽんっ!!




 カラスのジョイは、たまらなくなって黒い大きなゴム風船の吹き口から、ヒョッコリと顔を出した。




 「はーいー!!拙者が『風船カラス』のジョイでーす!!」




 「パパーーーー!!」


 



 ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ!!!!



 「ちょ・・・ちょ・・・!!」


 突然の『父カラス』との再会に感極まり、勢いよく『父カラス』のジョイの懐へ飛び掛かったビオレに、ジョイは慌てて顔を再び吹き口に潜り込ませた。




 ぐいっ!!




 ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!




 ビオレは、嘴を『父カラス』のジョイの入ってる大きなゴム風船の吹き口に突っ込ませると、パワフルに息を吹き込んだ。




 ・・・すげえ・・・!!


 ・・・拙者よりビオレちゃん、気嚢の肺活量がすげええ・・・!!



 ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!ふーーーーっ!!




 ばぁーーーーーーん!!




 ヒラヒラと、カラスの黒い羽根と割れた黒い風船の破片が舞う中、キョトンとカラスのジョイとビオレ父子は見詰めてやがて・・・





 「かかかかかかかかかかかかかかか!!」


 「はははははははははははははははははは!!」




 と、翼をお互い抱き抱えて、再会を喜んだ。





 「どおよ!拙者の娘は、肺活量が拙者譲りで凄いだろ!!」


 「パパ!どうだった?!風船割り鳥の本場『米国』は?」


 「おおよ!拙者、世界一の『風船割りカモメ』のミッチェルちゃんとの修行してきたぜ!!

 その後、『にっぽん』全国風船割りの行脚してきて、またここに戻ってきたよ!!」





 娘カラスのビオレの知り合いである、キスカとワイパアは、今や伝説と化した『風船割り』カラスのジョイの側へやって来た。


 「ジョイさん、久しぶり。」 


 「ええーっ!?キスカちゃんとワイパア君って、ジョイさんと知り合いなの?!」


 「うん!」「そうだお!キスカちゃんとワイパア君が巣立ちの何週間前に一緒に、こうやってここの。ねぇー!!」


 「ねぇーーっ!!」


と、翼をお互い抱き抱えて、再会を喜んだ。



 ・・・あれ?そんなことあったっけ・・・



 そうだった。


 このキスカとワイパアは、渡米前にジョイから風船でちょっかいを出していたのだ。


 「うん!」「そうだお!キスカちゃんとワイパア君が巣立ちの何週間前に一緒にジョイさんと、『ふうせん』で遊んだ。ねぇー!!」


 「うほーーっ!!ジョイさん!生きてて良かった!!」


 再会を喜ぶリーダーカラスのアスレッドの嘴に、萎んだ風船が引っ掛かっているのをジョイ見つけた。


 「あ、アスレッドさん久しぶり。せっかくだけど・・・」


 「なあに?」


 「この風船、膨らませられる?!」


 「ええっ!!関節キッス?!しかもジョイさんの娘と?!」


 「うん!アスレッドさんの膨れっ面看てみたい!!」


 「つーか、ジョイさん!せっかくだから、華麗な風船割りテクみせて!!」「でも、膨らんだ風船無いとないし・・・あ、君達も風船膨らませて!!膨らんだ風船無いと、風船割り出来ないよお。ビオレ、風船分けてくれね?」 「いいよ!パパ!!」


 「えーっ!!」「膨らませれるかなあ?あたし?!」




 ぷぅーーーーーーーーっ!!




 「もう風船パンパン!!あたしも!!すぅーーーーっ!!」





 伝説の『風船割り』カラスの娘のビオレちゃんの影響で、ここにいるカラス等も風船遊びが『趣味』になった。


 こうして、どんどんカラス達や鳥達が『風船』の魅力に魅かれていくのが、『風船』を誰よりもこよなく愛するカラスのジョイにとって喜びとなり、生き甲斐になった。

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