風船割りカラスジョイの伝記

アほリ

序章

 ぱぁーーーーーん!!




 「いゃっほぉーーーーーーーー!!」


 ハシブトガラスの雄ジョイは、空中で滑空して嘴で割ったヘリウム風船の感触に思わず興奮していた。


 というのも・・・


 「これで拙者が『葬った』風船!!通算1000万個達成!!

 うーん・・・!!本当に長い道程だった!!」


 カラスのジョイは、『風船割りカラス』。

 「空に飛んでいるゴム風船があるところ、カラスのジョイありき!!」

 と、他のカラス達がウワサする程、ジョイは『風船割り』の名手となっていた。


 鋭い嘴で突っついてパン!!


 脚の鉤爪で掴んでパン!!


 風船を割り続けてゴムの匂いがこびりついたカラスのジョイの嘴と鉤爪は、ジョイ風船を割る為にあるようなもので、鋭く研ぎ澄まされていた。


 割った風船の破片は、直ぐさま急降下して拾い、自らの塒の巣にコレクションしていた。


 余りにも風船を拾いすぎて、


 「この巣、ゴム臭い!!」


 と、知り合いのカラス達に指摘される位、町外れの雑木林の塒の巣が、1面の割れた割れた風船で覆われていた。



 ぼよん。



 野球場で拾ったジェット風船を捩じ込んで骨格にして、周りを割れた風船の破片の合わさった弾力のある巣にジョイは体を埋めると、だいぶ前に道端に拾った萎んだゴム風船を嘴にくわえて、一生懸命息を入れてぷー!ぷー!と吹き込んで膨らませて遊んでいた。




 そんなある日のことだった。



 いつものように、ジョイは塒の巣で近くの生ゴミを漁って拾った人間の残した食べかけを喉袋から嘴へムシャムシャと食べながら、

 「今日は風船は飛んでくるかなあ・・・??」

 と、空を見上げていた。


 「それにしても、拙者の兄弟。今頃どうしてるかなあ・・・

 拙者みたいに、風船割ってるかなあ・・・」





 

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