第2話 いざ異世界へ!

ピピピ……ピピピ

「ん……」

目覚まし時計のアラームでレオルは目が覚めた。アラームをとめてベットから起き上がり昨日の出来事を思い出す。

あの後、博士に行くかどうかを決めておくように言われてからずっと考えていのだ。そのせいかあまり眠れていなかった。

自分の部屋を出ると博士が、朝食の用意をして待っていた。

「あー…、おはよー」

まだ眠そうな顔の博士が、眠そうな声で言う姿がすごく可愛くてつい見とれてまった。

「あれー、どうかしたのー?」

とそう博士に言われ、我にかえったレオルは慌てて

「な、なんでもないですよ。おはよう。」と返した。

博士が不思議そうな顔でこちらを見てくる。レオルは笑ってごまかしながら、椅子に座る。

 博士は料理があまり得意ではないので、今日の朝食はパンとコーヒーだ。だからこういったトースターで焼いて皿に乗せるだけ、といった簡単なものしかできない。

だからいつもは、レオルが博士の食事を作っている。それでも自分のために用意してくれた料理がどれだけ簡単でも、博士が焼いてくれたパンが、コーヒーが、いつもより美味しく感じた。


_________



パンを食べ終わり、コーヒーを飲んでいると博士が少し思いつめた顔で

「あのさ……その……行くかどうか決めた…?」

と聞いてきた。

昨日の博士のあの言葉を聴いて、レオルはとりあえず一晩考えさせてくれといった。

異世界ということもあり、かなりの不安があった。しかしそれ以上に好奇心が勝った。

故に答えはもう決まっている。

「行きます。」

しかしながらどうやら博士にとって予想外の回答だったらしく

「本当に…いいの…?」

「いいですよ。それに博士の行くところだったらどこでも行くって決めましたから」

すると博士は嬉しそうで泣きそうな顔でレオルに抱きついた。

「うん!ありがとう!私、すごくうれしいよ!」

「ちょっ博士!いきなり抱きつかないでくださいよ。」

「やーだもーん!えへへっ!」

「全く博士はいつもこうなんだから…」

そういうレオルの顔にはやさしい笑みがあった。


「ところでいつ出発するのですか?」

「もちろん今日だよ。すぐ準備しよう!」

目をきらっきらさせながら、顔を寄せてくる博士、レオルは急すぎてただ笑うことしかできなかった。

「じゃあさっそく準備をしよう。前もって買っておくものを書いておいたから、悪いけど買ってきてくれるかな?」

これが博士の悪いところである。レオルがいつも機械のパーツなどを、買ってきてくれること前提で物事を進めるからいつも困らされている。

(もうこれには慣れちゃったけど、たまには外出てほしいなぁ)

そんなことを心の中で思いながらも、結局断れないレオルである。ここがレオルが博士に甘い部分である。

「じゃあいってきます。」

着替えを済ませ、町にいこうと外に出ようとした時、博士が機械をいじりながら

「レオルが帰ってくるまでに、機械の調整終わらせておくから、気をつけていってらっしゃい!」

博士いつになく元気な、いってらっしゃいが聞こえた。

そんな声を聞きつつレオルは早く終わらせて帰ろうと、気持ちを切り替え町へと出かけた。


レオルは生家町を歩きながら博士からもらったメモを見る。

そこには綺麗な字で書かれていたがあまりにも内容が大雑把すぎていた。

まず1つ目に3日間分のインスタント食品と飲み物。

2つ目に3日間分の荷物が入りそうなバックもしくはリュック。

3つ目にトランプ。

4つ目に機械のパーツや道具

5つ目には博士用の下着と書いてあった。それを見たレオルは(5つ目以外は買って帰ろう)とそう心に誓ったのだった。


それから2時間買い物を済ませ、買ったものを確認する。

「よし、時間はかかったけどなんとか買えたな。」

レオルは2時間、町内に50以上ある店をあちこち回りようやくすべてを買い揃えたのだ。

家に帰ろうとしたとき、グゥ…。とレオルのおなかがなった。

生家町のお店は全て10時に開店する。そこからちょうど2時間がたっており今はちょうどお昼時なのだ。

2時間歩き回っていてはさすがにお腹も減る。

「帰ってお昼済ませてから出発だな。」

レオルは家に向かって歩き出す。


___________



「はぁ~ ただいま。」

家に着いたときにはもうレオルはクタクタだった。

「おかえり!」

いつものように博士が抱きついてくる。疲れすぎてて避ける気にもならなかった。

30秒くらいで今回はやめたようだ。疲れているのを察してくれたのかと思っていると

「ちゃんと買ってこれた?」

博士が聞いてくる。

そっちかと思いつつ

「はい。買ってきましたよ。」

「おー、どれどれ…」

博士が袋の中を確かめてあれ?と声を上げる。

「どうかしましたか博士??俺、何か買い忘れてましたっけ?」

博士が残念そうで不満そうな顔でこちらを見ながら

「下着買ってきてくれなかったの?」

その台詞を聞いたレオルは顔を赤くし

「か、買ってくるわけないでしょ」

と抱きつかれた時よりひどい声をあげた。

「あぁ~残念。でもちゃんと買ってきてくれてありがとう。それとよくできました!」

笑顔を浮かべながら頭をなでてくる。

なんだか久しぶりにこんなに褒められたせいかレオルは照れくさそうな笑いを浮かべた。

「と、とりあえずお腹すいたからお昼にしましょう。」

流石にもう限界であった。生家町から家まではそこそこ距離があり、それを歩いてきたレオルは空腹で倒れそうだった。

気が付くとテーブルのほうからいいにおいがしてきた。

「お腹すいて帰ってくると思ってカップ麺用意しておいたよ。」

席に着き、いただきますのあいさつをしてカップ麺の麺をすすった

(あぁこれまで食べたカップ麺の中で一番美味しい。)

ただのカップ麺であるが空腹は最高のスパイスともいう。普通のに食べる時よりも何倍もおいしいかった。

今日に至ってレオルはその気持ちを理解することができたのである。


「はぁーおいしかった」

そんなことを言いつつも気持ちの切り替えの早いレオルはすぐ次の言葉を口にする。

「さて荷物も準備できたことですし、出発しましょう。」

その言葉を聞いた博士はうんと首を縦に振り、レオルに全ての荷物を装置の上に置くよう言われた。

指示通り置きこれで大丈夫だろうと思っていると

「これは持っていかないの?」

博士がレオルの自室に置いてある1振りの刀を持ってきた。

「そうですね、もっていきましょうか。」


そして博士は笑いながら装置を動かし

「よし、これで準備完了!」

博士も装置の中に入ると装置が光り始めた。

博士が興奮を隠し切れないよう拳を突き上げ

「じゃあ異世界に出発!」

光が2人を包み、その研究室から“世界”から、2人の姿は消えた。


光に包まれて一時的に失われていた視力が回復し、顔を上げあたりを見渡すと自分たちが高台のようなところにいることが分かった。

「さぁ、ついたよ。」

「ここが…異世界…」

「うんうん!いい出来だ。大成功だね!」

博士の声が遠くに感じる。どうやら成功したようだ。

しかし、レオルには目の前の光景がにわかにも信じられなかった。

そこには100万ドルの夜景とやらに勝るとも劣らず、いや、それよりもはるかに美しくそれでいて荘厳な超高層ビル群の夜景が広がっていた。

「綺麗だ…。」

その光景にただただ見とれる少年と、少年を見る女性の姿がそこにはあった。

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