私は波打ち際で石を投げる

肌に貼り付く感触を嫌がりながら

何も起こらぬ砂浜で

波に微かな波紋を作る


カモメは潮風を嫌わない

このじめりとした湿り気も

時に荒れ狂う気まぐれも

彼らは遠く遠くへと飛ぶ手段の一つだから


港では漁師が声を上げる

大きく帆を張り意気揚々と

広い海へと出航する

彼らを送る声も希望に満ちて


私は未だに漕ぎ出せないでいる

怠惰や臆病や不安 そんな錨に心を留められて


「錨を上げろ!」

また、声が響いている


私はまだ 石を投げている

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