10年もある

不甲斐ない機会で出会った君は

今年で10歳の誕生日になる

君は画家になりたいというけれど

君は絵が私よりも上手くはない

君は10年もあるというけれど

私は10年しかないと思っていた


画家になれなかった君は

今年で20歳の誕生日になる

君は今度は社長になりたいというけれど

私は君が社長になることはないと考えている

君は10年もあるというけれど

私は10年しかないと思っていた

私よりも絵は上手くなったが


社長の配下に住む君は

今年で30歳の誕生日になる

君は次は社長のなりたいというけれど

私は君のことはどうでもいい

君は10年もあるというけれど

私は もう 君のことはどうでもいいんだ

自分のことに精一杯なんだ


小さな会社の上に立つ君は

今年で40歳の誕生日になる

君は会社を大きくしたいというけれど

私は君とはもう会えない

君は10年もあるというけれど

私は君に合う顔がない

私は人間でさえもないんだから


今年で10年経った私は

ただただ仕事と向き合うだけの日々

つまらない仕事につまらない人生

自分は嫌気が差す


いい人生を送った君は

これで幸せか? これで悔いがないか?

もう私は半生記を生きて

苦しみながら君を憎むよ

優柔不断な君には口先だけがお似合いなのかな?


翌日のある日

今年で50歳になる君の誕生日だ

私は呼ばれたが内心は行きたくはなかった

そんな君はこんな事を言う

新しく事業を起こしたい

君は10年もあるということは

私も10年もある

私は画家になりたい

周りには恐ろしく恥ずかしいことだが


まだ10年もある


10年あれば出来るはずだ

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