マインド・ブレイク!(2/3)
「す、すまない」
涙を拭われる。
結局、セックスどころか接吻もせず、ただ抱きしめ合うだけだった。性的興奮も上がらず、ただ必死に涙を堪え、何もない時間をしばらく過ごしたのだ。
「すまない、急に泣き出してしまって」
「本当だ
言われてしまったな、山田ヒロハル青少年。
「すまない……」
「謝らなくて
「す、すまない! そ、そのだな、別に川崎君とセックスがしたくない訳じゃないんだ! 寧ろ、君のことは凄く魅力的な女性だと……」
そうすると、川崎氏は優しく山田ヒロハル青少年の口を塞ぐ。
「抱きしめてくれたから、それ
川崎氏のことを少し傷つけてしまったのかもしれないな。山田ヒロハル青少年がさらに沈んでいると、川崎氏から話しかける。
「委員長
「……」
「委員長、なにもそんなに他人のことで悩む必要な
川崎氏は笑顔をこちらに向ける。
「そ、そんな……」
「そんなことあるよ。イジメも友達付き合いも恋愛もエッチも、ぜーんぶ自分の自己満足。だいたいの人がそう思ってるし、アタシも
川崎氏は目を伏せる。
「でも……委員長は
「……」
自分は、優しいのではない。
ただ、人と接するのが怖い、
ただ、臆病なだけ、
そう山田ヒロハル青少年は考えている。
「え!? ど、どこに行くんだ?」
「だ、ダメだそんなもの! 出会い系なんかするんじゃない!」
山田ヒロハル青少年は川崎氏を止めるが、彼女は当然キョトンとした表情を浮かべる。
「あー……いろいろ説明するとめんどくさいのだが……簡単に言うと私は君の考えていることが分かるんだ」
「あ、ああ……だから、その……あまり不健全なことをしないでほしい……私が言えた義理ではないが……」
しばらく、お互い沈黙に包まれていると、川崎氏は笑う。
「……
「キャ、キャサリン君に似てる?」
山田ヒロハル青少年は思ってもみなかった人物に似てると言われ、不意をつかれた。
川崎氏が話し始める。
「委員長が
たぶん、山田ヒロハル青少年がネコを見ることが出来なければ、今頃性に乱れていたであろう。
「それで
「え? な、何がだ?」
「昨日、
「え!? あの時キャサリン君が落ちてきたのは、君のせいだったのか」
なるほど、あの場に川崎氏も居たのか。
「アナタは、
「ああ……キャサリン君らしい意見だ」
「だから思わず
「い、いや、良いんだ。結局誰も怪我しなかったからそれで良い……ネコが見えるようになってしまったが……」
「いや、何でもない」
あの現場の根底には、そんな背景があったのだな。
「それじゃあ、そろそろ
「あ、ああ、それなら分かった」
教室を出ようと、川崎氏は出入り口の手前まで向かう。だが、入り口の前でこちらを向き直る。
「ど、どうしたんだ? 川崎君?」
「え、ええ!?」
そして、そのまま川崎氏は廊下へと飛び出していった。途中で泣き声が聞こえたが、徐々に遠ざかっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます