マインド・ブレイク!

マインド・ブレイク!(1/3)

「委員長もこんな日に来たんだ。本当に真面目だうひゃー! 人生最後の日にやれる人が委員長とかテンション上がってキター!ね!」

「や、やあ、川崎君……」

 さっそく川崎氏は、山田ヒロハル青少年に対して性的対象と見なしているようだ。

 キャサリン氏の言っていたことは、本当だったみたいだ。

「……」

「ん? どうしたの委員長?」お? 上のネコさんがその子に呼びかけているみたいだぞ~?

 如何にも、この山田ヒロハル青少年は、ネコである我が輩達を観測出来る人間なのだ。

黙っちゃって、もしかしてアタシに惚れちゃおお! まさか二人目のネコと話せる人間だ! アタシ川崎マコちゃんのネコです! よろしく委員長☆った?」

「二人目? ……い、いや何でもない、ぼーっとしていた。ところで、川崎君は何故学校に?」

「委員長だって、学校に来てるじゃん。アタシも真面目だから家に居るとクソ爺に暴力振るわれるから、マコちゃん人生の最後を楽しかった学校で過ごすって決めたんだよ!学校来ちゃったって感じ」

「暴……力?」

「え、……何? 何か言った委員長?」あ! 余計なこと言っちゃったかも! マコちゃんは気づいてないから、誤魔化して!

 親から暴力とは、山田ヒロハル青少年よ。君にとってはとても聞き捨てられない言葉ではないか?

「……まさか」

 山田ヒロハル青少年の中で、ある物事の辻褄が結びついた。

「ねぇ? 委員長、本当に大丈夫? ずーっとぼーっマコちゃん本当に心配しちゃってるよ! 委員長、スマイルだよ! スマイル! スマイル!としてるけど」

「いや……大丈夫だ」

 山田ヒロハル青少年はズボンのポケットからを取り出した。

「これは、君のだろ?」

 それを川崎氏の目の前に差し出す。

「イニシャルが掘ってある。M・Kって……」

「ん? ……あ! そうそう! 一週間ぐらい前に無くしたんだよね!おー! ナイス委員長君! 好感度アップだよ!ちょっと高い奴! 委員長が持ってたの?」

 そうであろうが、山田ヒロハル青少年は迷っている。

 彼女に尋ねるべきかどうか――

「委員長ありがとね! でも、何で委員長はずっと持ってたの? まさか、私のだと分かっていながら口紅を大丈夫大丈夫! こんなこと言ってるけど、内心意識されてるかもって喜んでるから! 期待してるよ!……マジキモい! 委員長マジキモいよ! ヘンタイじゃん!」

「いや……そうじゃないんだ……」

 山田ヒロハル青少年は、浮かない顔で話し始める。

「すぐ返さなかったのはすまない。だが、これ君に返すと同時に、私の立場から君に聞かなくてはいけないこと出来てしまうんだ」

「え? 聞きたいこと? 私に何を?」タイプの人とか? スリーサイズとか? 落とし物を口実にするなんて中々憎いね委員長!

「ああ……だが、それはクラス委員長として川崎君に聞くことであったんだが、私自身は逃げていたんだ……」

 一つ溜め息を吐く山田ヒロハル青少年。

「川崎君……これを見つけたのは焼却炉の中だ。ついでにキャサリン君の靴の中に……」

「……え? 委員長……靴って……まさか…え? 何これ? 何かあの外国人をイジメてたのばれてない? こんな良い雰囲気からマジありえなくない?…」

「やっぱり、君はキャサリン君をイジメてたのか」

 川崎氏のことは嫌いではなかった。寧ろ自分に話しかけてくれる数少ない女性として好感の思いも持っていた。

 だが、薄々分かってはいたのだが、その川崎氏はキャサリン君をイジメに加担していたのだ。主犯かどうかまでは分からないが、どうしてこんなことをと山田ヒロハル青少年の胸を締め付ける。

 いや……動機も今何となく分かったのだが……

「は? 私あんな子イジメてないし! って委員長の前では小悪魔系演じて主導権掴もうとしてたから、言うか、それ今言う必要なくない? あと悪い印象にしないように隠そうとするよ!でも、本当に今言う必要ないじゃん!少しで皆死ぬんだからどうでも良いじゃ空気読んでよ委員長!ん!」

「いや、皆死んだりなんかしない。あれはマスコミの大嘘だ。皆誤情報に踊らされているだけなんだ」

 どうしたというのだ山田ヒロハル青少年? 嘘まで吐いて随分と大きく出るではないか? 確かに我が輩の力を引き出せれば食い止められるかもしれないが、必ずではないのだぞ? それほど、止められる自信があるということなのか?

「……皆にはちゃんと未来が来る。明日も明後日も明明後日も来る。だから、もうこんなことしないと誓って欲しいんだ。私は川崎君にそんなことをしてほしくないんだ」

「・・・・・・」マコちゃん考え中……は!?

 うつむく川崎氏の上でグルグル回っていたネコが何かに気づく。

 そして、川崎氏は笑顔で顔を上げる。

「うん、分かった! アタシ悪いマコちゃん委員長が何考えてるのか分かっちゃったよ!ことしちゃったから反省する」もう、委員長も悪い奴だな~

 そう良いながら川崎氏は山田ヒロハル青少年の手を掴み、

「うおおおおお!」

 山田ヒロハル青少年の思考は一瞬で沸騰してしまう。

「エッチするから許してよ委員長。この後に及んで女の子を脅迫するとは、なんてドSなんだ委員長は!それで口止め料ってことで良いでしょ?」でもマコちゃんはそういうパターンに何度もあってるから、逆に主導権握っちゃうよ!

 山田ヒロハル青少年は、川崎氏のカウンターパンチをもろに受けてしまったようだ? 彼の意識全てが手の平に集中してしまい、という単語の羅列しか思い浮かばなくなってきた。

 我が輩も、これ以上はしか言えなくなりそうである。

「どう委員長? アタシの思ってたのより結構大きいでどうだ! これがマコちゃん必殺の悩殺おっぱいだ! しょ? 着やせするタイプって言われるだよこれで落ちなかった男はいないのだよ!ね?」

 片手では到底収まりきらない圧倒的な存在感と弾力を前に、山田ヒロハル青少年の興奮度は上がる一方である。

「やっぱり、委員長って女の子おっぱい大好き委員長の性癖はすでに調査済みだよ!でしょ? いつもジロジロ見てるのバレバレさあ、観念してセックスしちゃいなよ!だったよ」

 確かに、この興奮度なら接吻だけで絶頂に到達するかもしれない。そうでなくとも、セックスまで至れば隕石を食い止めるまでの力を得ることも出来るかもしれないな。

「あ……ああ……」

「委員長……とりあえず、童貞卒業しておかないくらえ! 上目遣い攻撃!?」

 さらに手を胸に押しつけてくる。

「アタシ、委員長だったらどんなことされても毎日に揉みし抱き放題! 挟みたい放題!良いよ? もし、隕石が落ちないっていうな隕石を食い止めたらマコちゃんと猿のように出来るんだよ!ら毎日エッチしてあげるし……」

「ま、毎日……」

 山田ヒロハル青少年、これはまたとないチャンスなのだ。この興奮度なら、後は性行為に及べば力を発揮出来る。

 それに、隕石を阻止した後も川崎氏と毎日のように性に溺れた生活を送れるのだ。毎日、夢にまでみた大きな女性の胸を好き放題出来るのだぞ。

「好き……放題……」

「……委員長、緊張してる?」顔真っ赤だし分かりやすいな~

何とか理性を保っている状態である。

アタシも……実は緊張してるんだ……何でだ父親とか兄貴とか、そこら辺のいろんな男に触らせてきたけどろう? 委員長に触られてるとドキドキす委員長は特別ドキドキするんだよね!るんだよね……」

「え……」

「よく分からないんだけど……委員長と今まで家族に殴られたり犯されたりして、その腹いせに援交とかイジメとかやってたけど、はなんとなくしても良いかなって思うんだ。他の人と違って委員長は真面目で、皆のやりたがらないことをする所を見てて、何でだろうね?」マコちゃんは引かれたんだと思うよ!

 山田ヒロハル青少年もな。互いに同じ痛みを分かち合う者同士だったのかもしれない。非常に相性の良い関係だと我が輩は思うぞ。


「……」


「アタシ、委員長のこと……」ちゅーしろよ! ちゅー! ちゅーしちゃいなよ!


 何を迷っていんだ山田ヒロハル青少年。こんな好条件に巡り会えることはほとんどない。



 人類が救えるのだ。



「う、うわあああああああああああ!」

「え!? な、なに!?」きゃああああああああああ!?

 山田ヒロハル青少年は、何故か無理矢理胸から手を離した。

 爆発寸前の思考回路と胸の感触が名残惜しいせいで、頭を抱えている。

「い、委員長? ど、どうしたの?」い、いきなり大声出さないでくれる! マジびっくりしたし!

 どうした山田ヒロハル青少年。何故川崎氏を拒絶したのだ。

「……拒絶したんじゃない」

 息を整える山田ヒロハル青少年。

「でも……君とはセックスしない」

……え・・・・・・え

「川崎君のことは嫌いじゃない……寧ろ好きだ。どうでもいい人間では、僕の中ではなかったから、だから君がイジメをしてたのを止めてほしかった。君にそんなことをしてほしくなかった」

「だ、だからもうしないってば! っていうか、もう今後がな、何が悪いの!? 最後にエッチする相手として問題あるの!?あるかも正直微妙だし……最後に 処女じゃないから!?なるかもしれないから、お詫びもかねて記念にエッチしておこうって……」

「違う! そうじゃないんだ!」

 山田ヒロハル青少年は首を横に振る。

「正直に言うと、私だってセ、セックス、し、したいさ。君のことだって好きさ」

 そして、山田ヒロハル青少年は真っ直ぐ川崎氏の目を見る。

「でも、この好きは友達としての好きなんだ! こんな気持ちのままセックスしたら、君をただの性欲のはけ口にしか見れなくなってしまうんだ!」

はあ?はあ?

 すると、川崎氏とネコは山田ヒロハル青少年を睨む。

「委員長、ピュア過ぎ! セックスなんてただのストレス発散のや~い、や~い、童貞こじらせ~、マジキモ~い遊びみたいなもんじゃん! 男も女も周りのみーんなそう思ってるし! 恋人として見るかなんてその後の話でしょ!」

「違う!」

 山田ヒロハル青少年が今までにないぐらい声を大きく張った。

 その声に、川崎氏とネコは圧倒される。

「世間とか皆の価値観がそうであっても……私は川崎君のことをそういう風にセックスしたいなんて思いたくない……」

「え、あ、ちょ、ちょい、委員長!?っと!?」

 突然、川崎氏を抱きしめる山田ヒロハル青少年。

「君を……他の男達みたいに……性欲処理の女とか……人類を救う為の都合の良い女とか……君を道具みたいに見る勇気がない……」

 強く彼女を抱きしめる。

「君を……道具として見たくないんだ!」

「い、痛いってば! 委員長落ち着いてよ!委員長どうしちゃったの? 怖い! 怖いよ~

 それでも山田ヒロハル青少年は川崎氏を抱きしめ続けた。

「ゴメン……本当にゴメン……」

「謝るなら早く離……って、委員長泣いてるのえええええええ!? もう意味分かんない!!?」

「ごめん……」

 謝る山田ヒロハル青少年を川崎氏は見つめ――

……もう、しょうがないな~委員長はそういえば、こんな風に抱きしめられたことないかも

 川崎氏は、山田ヒロハル青少年の胸に顔を埋めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る