エイリアン・アブダクション!(4/4)

 今現在、山田ヒロハル青少年は絶叫しながら学校の屋上で、慌てふためいている。

「な、何で私の頭にもこんな大きな猫があああああああ!」

 山田ヒロハル青少年、引き剥がそうとしても無駄だ。爪が神経まで絡み付いている。脳まで引っこ抜かれてしまうぞ。

「うわあああああああ!」

 彼は恐怖し、我が輩から手を退けた。

 目まぐるしく事態が変わっていく中、山田ヒロハル青少年は動揺を隠しきれないようだ。

「あ、当たり前だ! いったいこの状況は何なんだ! お前達は何者なんだ!」

 ……我が輩はネコである。

「うるさい! 真面目に答えるんだ! 私達人間の頭に勝手に取り付いて、いったい何が目的なんだ! 今すぐ離れさせろ! 今すぐにだ!」

 落ち着くのだ、山田ヒロハル青少年。

「落ち着けるか!」

 良かろう、話してやろう。

 我々はお前達人類がこの地球と言われる惑星で繁栄する前から居た、君達では特別なことがない限り可視化は出来ないはずの別次元層生物なのだ。

「……え?」

 もっと言うなら、恐竜時代より前に他の銀河系から漂流してきた地球外生命体なのだ。生命に取り付き、脳が作り出す情報を得て、我々はエネルギーとネットワークを作り出している情報生物と言ったらよいだろう。

 特に、君達のような知的生命体は情報の複雑性も相まって、我々には非常に好ましい宿り木なのだ。

 ……理解出来ないと思考しているが、安心するのだ山田ヒロハル青少年、お前を捕って食おうなんて我が輩は思っておらん。いや、すでに情報を我が輩達は十分摂取させてもらっている。

 やろうと思えば、物理的に補食することも可能だが、正直エネルギー摂取効率が悪い。それにのだから我々が君達を食うメリットは少ないのだ。

「……はぁ?」

 ん? 聞こえなかったのか?

 とにかく、エネルギー摂取効率が悪いからメリットが少ないと言ったのだよ。

「いや、そこじゃない! 人類が滅亡するってなんだ!」

 それは、後二日で人類滅亡するということだ。そう言うと、山田ヒロハル青少年の困惑した顔が、さらに濃さを増す。

「ふ、二日!? 後二日で人類が滅亡だって!?」

 ああ、その通りだ。

 もう気付いている人間が何人も居るが、この世界に存在する政府という階級の者達が、それを君達に通達していないらしいな。政府は、一般人と言われる君達の階級には真実を隠し、地下のシェルターへと逃げ込んでしまったぞ。

「いやいや、そんな馬鹿な話……」

 嘘ではない。我が輩が話したことは全て事実だ。

 本当に、後二日で人類は滅亡するのだよ。


「でも……アナタ達なら止められるのよね?」


 我々が話し合っている中、後ろから声を掛けられた。

 早く振り向くのだ、山田ヒロハル青少年。

 そこには、キャサリン氏が立っていた。

「山田ヒロハル・セイショウネンのネコさん……アナタがネコの中枢ね?」

 如何にも、我が輩がネコ達の中枢である。

 我が輩に……いや、宿り木である山田ヒロハル青少年に刺激を与えれば、物理的干渉が可能になる。しかも絶大な力で……だ。

「そう……ようやく、会えたのね……」

 山田ヒロハル青少年は口を閉じること忘れてしまったようだが、キャサリン氏は金髪の髪を靡かせ、我々を睨む。

「お願い、アナタ達の力で隕石衝突を防いで欲しいの」

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