散歩道考察
@kantata
南平団地
バブル期にできたものであろう南平団地。
東京の真ん中、日野市は西に位置し、眼前には今となっては珍しくなってしまったホタルが生息する浅川が流れ、八王子市とも近いこの団地は開発当初まだできてもいない部屋に億近い値段がつけられ、にもかかわらず多くの人が競って入居を希望したことだろう。
家族で団地に移り住むことが夢であった時代。
保育施設が併設された棟が一番良い立地に建っていた。
また、この広い団地に一つの保育施設では最盛期の出生率に耐えられなかったのかプレハブの保育施設が建っていた。
現在、この団地は実に静かだ。
多くの部屋には人気がない。
建物は古くなり、もはや一等地の保育施設は使われている様子はない。
プレハブの方にはわずかに子どもが遊んでいるようであったが若年層の減少に伴って起こった保育施設の減少により保育施設に預けられない待機児童の増加が問題となっているこのご時世だ。
プレハブの保育施設には団地の子どもよりも外の土地からの子どもが多いことだろう。
残された老人たちはかつて大都市の一角に家を持つという夢を勝ち取った者たちだ。
彼らもやがては寿命が訪れて、ほとんど人のいない廃墟同然のものが残されるだろう。
そこはガラの悪い若者たちの絶好のたまり場となりうる。
何も無くなって地価が下がれば、どこかの企業が利用価値を見いだして都市開発が進む。
強い者が生き残るのではない。
賢い者が生き残るのでもない。
変わることができる者だけが生き残るのだ。
それゆえに変わることができなかった、残された老人たちのかつての営みの場は大きな流れに押し潰されてゆくのだろう。
そして私もまた、変わらざるを得なかったものの一人だ。変えることを強要する潮流のひとつと成り果てたのだ。
私もまた憎むべき悪の一人なのだ。
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