88日目 冬の嵐は虎の味

 この前の町に戻ってきた。今回はちゃんと部隊の用事だよ! うん! この前のはサボりではない。決して。


 さっきから数台、戦車が集まって出撃してる。

 ヤバイのかな? ドイツ軍。


 あの教会からジジイが顔を出している。手を振ってきた。

 こっちに来いってことか。


 行ってみた。

「ドイツには凄い戦車があるから気をつけろ」

 なんだろ、この某RPGの村人A感あふれる発言。てか、俺にはどうする事も出来ないし。


 後ろから肩を叩かれた。彼だ。

「あんまりそんな事してると、政治将校に目ぇつけられるよ」

 あー、はい。

「おじいちゃん、すいませんね」

 ジジイが大人しそうに会釈する。そんなガラじゃねぇだろ。



 歩いて歩いて歩いた。これぞまさに雪の進軍。雪原の中、戦車と兵士が進む。靴の跡が一つの方向に集まる。


 途中、戦車の部隊と出会った。

「ちょうど随伴がいなかったんだ、乗っていけ」

「わかりました……全員戦車に乗れ!」

 いや、彼が仕切るのかよ。てか、隊長になってんじゃね? 一番前を行ってるし。

 すぐ後ろを行く俺。


 乗り込んだはいいけどさ、外だから風が酷い。

 しかも時々、死体を見かける。外傷がないから、寒さで死んだのだろう。

 ウゥ〜キツイぜ! ……いや、笑ってる場合じゃねぇよ。


 戦車に乗ったから時短にはなった。つまり、死への道が縮んだ。

 俺達より早く出た奴らより早く戦場に着いてしまった。


 周りを見ると歩兵が沢山だ。戦車は所々。

 しばらくして遠くにシミの様に敵がポツポツ現れた。


 もちろん撃つ。けど、敵は歩兵といつもの戦車だけじゃなかった。


 ドォン…………ヴゥォン ダァァァン

 俺達が乗る戦車のすぐ後ろの戦車に当たった。

 いつもの戦車砲より格段に違う。こういうのは兵士の勘っていうと全部方がつくけど。

 速い感じ、弾速が。わかんないけどこっちの戦車が一撃でやられた。


 数秒後再び飛んできた。これも一撃で。

「降りろ」

 言う前に全員降りてる。


 やがてゆっくりと敵の戦車が姿を現した。砲は常にこちらに向けて。


 もちろん撃つ。

 ドォン ……グァン

 こっちの弾は全て跳ね返された。


 何なんだよ、あのバケモノ。

 それが周りを見ると2、3輌。

 終わったな、こりゃ。


『あのバケモノ』こと、ティーガーさんである。ティーガーさんは最強の装甲と戦車砲、そして最弱の足回りを備えた最強? の戦車だ。


 ちなみにこの砲は対空用の馬鹿みたいに強力な変態砲……なんか、こっぴどく言ってるな。

 ティーガーは虎って意味だ。

 兎に角ツヨイ。


 今の俺は『ティーガー』なんて知ったところで何も出来ないけど。


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