検証その1:お兄ちゃんにエロ本を与えてみたっ

『モロエッピン』。

 表紙でエロい表情をしたおねーさんが、羨ましいばかりの巨乳を丸出しにしていた。

 昨日、変装までして、隣街の本屋で手に入れたブツだ。ちなみに表紙は巨乳の美人さんだけど、中はロリ貧乳ちゃんやら、コスプレさんやら、パツキンポルノ女優まで揃えていて、なかなかにバリエーション豊富。私も勉強に……げふんげふん、うん、これならお兄ちゃんがどんな性的嗜好を持っていたとしても対応できるはずだよっ。

 てことで、私はこのお宝をお兄ちゃんの部屋の前にそっと置いてみた。

 今、お兄ちゃんはお風呂に入っている。そろそろ戻ってくるはずだ。

 私は自分の部屋の扉をちょびっと開け、様子を伺いながら、お兄ちゃんが戻ってくるのを待った。


「お風呂、上がったよ。父さん、次どうぞ」

 

 待つこと数分。階下からお兄ちゃんの声が聞こえてくる。

 やがて階段を登ってくる音と共に、ついにお兄ちゃん登場!

 タオルでサラサラヘアを無造作に拭きながら、Tシャツに半ズボンというラフな格好をしたお兄ちゃんが自分の部屋の扉に手をかけ、そして……。

「ん?」

 おおう、気付いたっ!

 そして、手に取ったぁぁぁぁぁ!

 よしよしよし、いいぞ、お兄ちゃん! そのままそのお宝を自分の部屋へと持ち去り、隠されし欲望を思う存分セルフバーニングするんだぁぁぁぁ!

「……」

 って、あれれ? お兄ちゃん、自分の部屋には入らず、隣にある私の部屋を通り越して、お父さんの書斎へと入っていっちゃったよ。

 私も慌てて自分の部屋を出ると、書斎の扉をそっと開いて中を覗きこむ。

 卓上ライトだけをつけた薄暗い部屋の中、お兄ちゃんが本棚の上を手探りで何か探している……と思ったら、いきなりウィーンって何かの機動音がして、本棚がスルスルと横にスライドした!?

 なんだこれと驚く私をよそに、お兄ちゃんはさっき拾った『モロエッピン』を本棚に隠されていた空間へ無造作に投げ込むと、本棚を元へ戻す。

 おっと、危ない。これは戻ってくるぞ。

 私はまたまた慌ててながらも、先ほどとは逆に自分の部屋へと舞い戻る。

 ほどなくしてお兄ちゃんが書斎から出て、自分の部屋へと戻る音が聞こえてきた。


 どうやら最初の作戦は失敗に終わったみたい。

 でも、別の意味で収穫はあった。

 私はお兄ちゃんに気付かれないよう注意しながら書斎に入ると、先ほど見た秘密を自分の手で再現してみた。

 そこには、うん、予想通り、お宝の山と、私の『モロエッピン』。

 お父さんの書斎にこんなのが隠されているってことは、やっぱりお父さんのお宝なんだろうなぁ。まったく、お父さん、不潔すぎるよっ! 

 で、お兄ちゃんはきっと『モロエッピン』も、お父さんのお宝と勘違いしたんだろう。なんでこの隠し財宝を知っていたのかは気になったけれど、エロ本をあっさりと放り捨てるその姿から、まったく興味がなさそうに見えた。

 うーん、お父さんもお兄ちゃんを見習って欲しいよ、いい歳なんだからさ。

「さて、と」

 私はとりあえず『モロエッピン』を回収。さらにちょっと悩んだけど、これだけの量があるなら少しぐらい借りてもバレないだろうとふたつ、みっつばかり拝借することにした。

 こ、これも勉強だよっ。そう、勉強! 私は勉強熱心なんだっ!


 ということで、汚らわしいお父さんのおかげで今夜も勉強がとても捗りそうです、うんっ。


 なお、その後に念のため、お兄ちゃんの様子を私の部屋から密かに作った覗き穴から観察してみたら、寝る前のストレッチで伏臥上体反らしをしていた。

 私たちと違って健全だね、お兄ちゃん!

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