第142回『うめえよ』→落選

『この先、渋滞が発生しています』

「じゃあ、抜け道検索頼む」

『わかりました』

 先程買ったカーナビを取り付けてもらい、早速ドライブに出掛けてみる。加速度センサーや人工知能が付いた最新型だ。

『次の信号を右に曲がって下さい。その先しばらく道なりです』

 俺はナビを試すため、わざと信号を左に曲がってみた。

『んん、もう。右だって言ってるのに』

 おっと、店員さんに勧められるままツンデレを基本モードにしてたんだっけ。面倒臭いからモードを変えてみるか。

「アゲアゲモードに変更!」

『あいよ、再検索するぜ旦那』

 威勢のよい男性の太い声が車内に響く。

『狭めの市街地と、気持ちの良い広域農道、どっちがイイ?』

「もちろん農道で」

『じゃあ、次の信号右な』

 やっぱりナビはこうでなきゃ。

 気分が良くなった俺は、小刻みに繰り返すカーブで軽快なハンドル捌きを披露する。

『すげえな、旦那』

 ほお、さすがは新型。加速度計測も正確らしい。

「そうだろ?」

『運転うめ……』

 その時だった。ガタンと段差による衝撃でフリーズしてしまったのは。

 なんだよ、いいところだったのに。

 そしてリセットされたナビが続けたのは――

『意外と上手いじゃない』

 ツンデレも悪くないか。

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