第134回『湖畔の漂着物』→逆選王☆☆☆

 海水浴をしていたら、水が凄く冷たい場所に迷い込んでしまい、驚いて砂浜に駆け上がった。

「あははは、あんちゃんもビックリしたか?」

 様子を見ていた海の家のおっちゃんがニヤニヤしている。

「そこ、みんな驚くんだわ」

「なんなんですか、ここは?」

 するとおっちゃんは口の前に人差し指を立てて、小声で話しかけてきた。

「この浜にはな、たまに湖畔が漂着するんだよ。だからその部分は真水で冷てぇんだ」

 湖畔が漂着する? どういうことだよ、それ。

「嘘だと思ったら、水の中ァ覗き込んでみな」

 言われる通り水の中を覗き込むと、赤や金色の魚が泳いでいた。

「海だったら鯉なんて泳いでねえだろ? だから湖畔なんだよ。砂や景色だって違うぜ」

 確かに砂もその部分だけ黒っぽくて、なんだかゴツゴツしている。波が静まると、見た事の無い山が雄大な姿を水面に映していた。

「これって……蜃気楼?」

「なことねえよ。山なんかどこにもねえだろ? それより今回はどこの湖畔なんだろうなぁ。あんちゃん、その景色に見覚えねえか?」

 見ると山頂はマッターホルンのように尖っていて、とても日本の山には思えない。

 ヤッホーと叫んでみると、ヤッホーと日本語でこだまが返って来た。

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