第128回『鈴木くんのモロヘイヤ』→落選

 初夏を迎えると、鈴木くんが丸坊主になった。と思ったら、頭の上から葉っぱが生えてきた。

「何の葉っぱ?」と訊いてみると、鈴木くんは「モロヘイヤ」と答える。

 夏になると、モロヘイヤは青々と葉を茂らせた。

「ほら、栄養満点。野菜の王様だよ」

 葉っぱを一枚一枚手で収穫しながら、鈴木くんは貧しい子供達を訪問する。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「いつもいつもありがとうございます」

 夏の鈴木くんは人気者だ。

 秋分の日を過ぎると、モロヘイヤから小さな黄色い花が咲き始めた。

「きれいだね、お兄ちゃん」

「まあ、可愛らしいですね」

 花を見せて回る鈴木くんも、人気者だった。

 やがて花は長い鞘となり、鈴木くんは中から小さな三角形の種をたくさん収穫する。

「お兄ちゃん、それ食べられるの?」

「欲しい? だったら、ちょっと人探しをしてほしいなあ」

「なに? その人探しって?」

「僕と同じように、体からモロヘイヤが生えている人を見つけてほしいんだ。そしたら、見つけた人数分だけ種をあげるよ」

 きっとその人も鈴木くんだからと、手のひらで種を転がしながら鈴木くんは微笑んだ。

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