第125回『あなたと出会った場所』→落選

「それで、それは何処?」

「サークルの歓迎会会場だったような……」

 私は友人を一人一人尋ね、あなたの痕跡をメモに取る。

 ようやく事実を受け止めることができるようになった私。そんなささやかな行動がリハビリになると信じて。

「俺は、二次会の居酒屋だったかな」

 あなたはしっかりと、友人達の記憶の中に生きていた。

「今さらこんなことを言ってもしょうがないけど、気を落とすなよ」

 うん、私頑張る。

 うじうじしていてもしょうがないから。

 でも夜道を一人で歩いていると、つい泣きたくなってくる。

「ねえ、どうしてなの……」

 アパートの手前の線路を渡る歩道橋。ガタンゴトンと下を走る電車と冷たい夜風が、いつも私を現実に引き戻してくれる。そこはあなたと私が交差する場所。

「もう飲まないって誓ったのに」

 酔って記憶を無くして酒乱と化す自分と、いつになったら決別することができるのだろう。

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