第123回『青い鳥』→落選

「ねえ、パパ?」

 マズい。娘がこんなに甘い声を出すのは、何かをおねだりする時だ。

「また、アレを注文してほしいんだけど……」

「アレって青い鳥か? 今年でもう三羽目じゃないか」

「だって好きなんだもん。今度はお小遣いで払うからいいでしょ?」

 今やネットで簡単に手に入る青い鳥。なんでも昔は、捕まえるのにとっても苦労したそうだ。外国の兄妹の奔走話が有名だが、そんなことを現代っ子に言っても理解してもらえそうもない。

「仕方がないな。来月のお小遣いから引いておくからな」

「やった!」

 喜ぶ娘を横目に、俺はネット通販のページを開いた。


 翌日。通販会社から大きめの段ボール箱が届く。

「ねえ、パパ。開けてもいい?」

 そわそわしながら俺を見上げる娘。

「いいんじゃねえの? お前のお小遣いなんだし」

 段ボール箱を受け取る時の満面の笑顔に俺は弱い。

「あー、箱の外からも分かるこの感覚、この匂い。やっぱり青い鳥って最高」

 娘は目を細めながら、勢いよく段ボール箱のジッパーを引いた。

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