第104回『法螺と君との間には』→落選

「君はなぜ、オオカミが出たなんて言ったんだ?」

「……」

「黙ってないで何か言いなさいよ」

「……」

「じゃあ、まず名前を聞かせてもらおうか」

「……」

「君、言葉がわからないの?」

「ちょっと待て。きっとこの少年は名前を知られたくないんだ」

「知られちゃマズイのね」

「そうだ。両親にバレるとこっぴどく叱られるからな」

「違ぇよ」

「なんだ、しゃべれるじゃないの。ははーん、両親に叱られてその憂さ晴らしでやったとか?」

「だから、違ぇって言ってんだろ」

「いや、学校で女の子にフラれたんだよ。その腹いせに違いない」

「違ぇよ。何の権利があって俺のプライベートに首突っ込むんだよ? というか何で俺はオオカミに尋問されなきゃならねえんだ?」

「違うぞ、少年」

「そうよ。私達、オオカミに似てるけどコヨーテなの」

「どっちも同じじゃねえか。どうせ羊を襲うんだろ?」

「それも違う。食べるだけだ」

「そうよ、君達も食べるでしょ?」

「ほらみろ。おーい、オオカミが出たぞ! みんな逃げろ!」

「こら、待て。名前を間違えるな!」

「ああ、行っちゃった。私達もまだマイナーね」

「いや、あの少年が『コヨーテが出たぞ』って叫んでくれれば一気に……」

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