第101回『あおぞらにんぎょ』→落選

 朝起きたら枕元に人魚が置いてあった。

「やった、願いが叶った!」

 ボクは喜びのあまり、鱗が黒光りする人魚を抱き上げた。

 説明書を読むと、その鱗は太陽電池になっているらしい。


 西暦二一〇〇年。

 二酸化炭素濃度の上昇に伴う温暖化がいよいよ深刻になった。

 このままの状況が続くと、古生代と同じ環境になって人類は死滅してしまう。

 そしてこの問題は、科学にとどまらず宗教にも及んだ。

 神は人をお造りになる前に、二酸化炭素を減らす生き物をお造りになったのではないか?

 困った宗教団体は、新たな学説を提唱した。


「人魚だ人魚だ。神様が地球で最初にお造りになった人魚だ!」

 嬉しくなったボクは、早速人魚を抱えて家を飛び出した。

 照りつける光を太陽電池に受けて、ウイーンと人魚が動き出す。

「初めまして。あたし水辺に行きたいな」

「じゃあ、ボクが連れて行ってあげるよ」

 近所の池に人魚を浮かべると、彼女は生き生きと泳ぎ出した。


 宗教団体が造り出した人魚のおもちゃは、泳ぎながら口から二酸化炭素を吸ってそれを水に溶かす。

 そして、古生代もこんな風に二酸化炭素が減ったと教えている。

 今日も各地の水辺では、太陽の光を浴びて沢山の人魚が泳いでいる。

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