『500文字の心臓』への挑戦
つとむュー
第97回『ペパーミント症候群』→落選
「おーい、薫君。ペドフって何なのかね?」
私はたまらず秘書を呼ぶ。
「さあ、知りませんけど」
薫君は私のパソコンを覗き込む。
「やだぁ、社長。PDFですよ、ピーディーエフ」
なに!? ペドフじゃなかったのか……
恥ずかしさのあまり私が俯くと、薫君は慌て始めた。
「ご、ごめんなさい、社長。悪気は無かったんです……」
顔を上げると薫君も赤くなっている。
「じゃあ、PDFとやらを作ってくれるかね」
「はい、承知しました」
薫君が微笑んだ。
昨日、私は営業の鈴木君に、得意先の情報を書類で送るとメールした。すると――
『社長、その書類をPDFにしてメールで送ってもらえませんか?』
という返事が来たのだ。
「薫君。書類はこれなんだが」
「分かりました。これをPDFにして鈴木さんに送ればいいのですね?」
「そうだ。それにしても何で紙じゃダメなんだ?」
「携帯やiPadを使って電車の中で読むんじゃないでしょうか?」
「全く最近の若者は機械ばかりに頼りおって。そういう紙を見ない輩を『ペーパー見んと症候群』と呼ぶんだよ」
「あら、アンドロイドの私に書類を読み聞かせてもらっているのは誰かしら?」
そう言って薫君は、PDFを作るために書類を飲み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます