蜻蛉の夜(步行月下)


              (こつ〳〵と)

私は道を步いてゐる

              (さら〳〵と)

月光が廣がる草原は

              (すらりと明るく)

蒼ざめて

              (覆つて)

そらは霞をこめて藍色である

              (謙虛な鈴のやうに鳴つて)

風はひそやかに

              (微睡まどろんでゐます)

その夜氣にあそんでゐる




蜻蛉かげらふが飛ぶ         (死へと向かふ列車のことです)




この世のものではないやうな

              (幽冥界でせうか)

靜かな〳〵宴である

              (かげらふはしやべりませんから)




おぼろげな星〻は暗い天空を今日もとんでゐる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る