第5話 夫との日々を振り返ってみる

私たちは何て運が悪かったのだろう。23年も平和だった国が突然無政府状態になるという事態に巻き込まれた。

それなのに夫は危険な国に残されたまま、私はいきなり来たことの無いフランスに飛ばされた。ホッとはしたけど観光気分になれなかったから、その時の写真は撮ってない。

治安が落ち着いてからはゆっくり旅行して、その時の写真が残っている。


そして一人で帰された実家のすぐそばで、1000年に一度の大震災と大津波、未曾有の原発事故が発生して、今も収束していない。

夫は復興の仕事を決意したのに、県職員に内定したのに、内定を蹴ったのだ。


私は2度の大きな混乱で体調を崩して帰国していたが、親は私の病気を理解せずに実家から追い出して、休む暇もなく臨時職員や派遣社員として働きだした。

福祉事務所やよりそいホットラインという相談ダイヤルに電話しても根本的な解決法は得られないまま、休みの日は体調不良で泣きながら寝ているか、家に居たくなくてどこかしら歩いていた。どこに行っても見慣れたお店と日本語の通じる人たちがいて安心した。


でもいつも思っていた。「どうして病気の妻のために帰国しないの?転職もしないの?転職しないなら何で公務員を受けるの?私の人生計画の邪魔をしないで!!」


夫が帰ってくるからということで受かっていた会社にも嘘つき呼ばわりされていじめにあった。犯罪歴もありそうなレベルの低い人間が集まっていたから。

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