「奴」が異世界にやって来た

@Reject2nd

プロローグ

 白西暦700年。

 まだ空が青かった時代。

 何の変哲もない、ただの馬小屋に「奴」は突如として現れた。


 それから1年後。

 世界は・・・「奴」に支配されていた。


     ・

     ・

     ・


 薄暗い下水地下道。

 壁には苔がびっしりと生えている。

 異臭も酷い。

 そこに、首枷をされた少女と鎧を着た蛇人が歩いていた。

 蛇人は首枷に繋がれた鎖を掴んでいる。

 犬の散歩の様な状態だ。

(蛇人・・・体中が鱗に覆われ、首から上が蛇の怪物)

 少女は蛇人に連行されている様子だ。


「チンタラスルナヨ人間。蛇王様ハ余リ寛容ナ方デハナイ。王ノ逆鱗ニ触レレバ、例エ貴様トテ只デハ済マヌゾ。」

 首枷をグイグイと引っ張られ、少女は苦悶くもんの表情を浮かべる。

「私は・・・お前達なんかに・・・」

 枯れた声でボソボソと呟ている。

くちヲ動カシテイル暇ガアッタラ、サッサト歩ケ!!」

 首枷を更に強く引っ張る蛇人。

「・・・ッ!!」

 余程苦しかったのか、少女は涙ぐんでいた。

「魔王討伐のため、騎士として育てられた私が・・・このザマとはな・・・。」

「・・・はずかしめだ。いっそ殺してくれ・・・。」

「兄上・・・。」

 強引に引きられる様な形で、少女と蛇人は下水地下道の奥へ進んで行く。


     ・

     ・

     ・


 下水地下道のその先。

 世界中の汚水という汚水が集まってくる場所。

 超巨大な汚い湖の中央。

 そこに、「蛇の帝国」は存在する。


 「蛇の帝国」にある王城。

 その城の頂上、「謁見えっけんの間」。

 王と下々の者とが唯一面談を許される部屋である。

「アァ、いつくシムベキ我君ヨ。今此処ここニ、主ノ賜ル寵愛ちょうあいヘノ感謝トシテ捧物ほうもつヲ献上致シマス。」

 膝を地に付けて深々と礼をする。

 その蛇人の前に、王座とそこに座る蛇王が居た。

 首枷をされた少女は蛇王の前に差し出される。

「結構、結構。下ガッテヨイゾ。」

「ハハーッ」

 蛇人が謁見の間から出ていく。

「・・・シテ、貴公。オ主ハ中々ニ・・・」

 蛇王が少女の体を舐めるように見渡す。

 彼女の服はボロボロで、所々肌が露出していた。

「良イ女ジャ。」

 首枷の鎖をグイッと引っ張り上げる。

「くっ・・・!!」

「ワシノ側室トシテ迎エ入レテヤロウ。」

「離してっ!!」

「言葉ノ悪イ女ジャ。ソコモマタ魅力みりょくト言ウヤツカノォ。」

 蛇王が強引に衣服を剥がしにかかる。

「やめて・・・!やめてよ!」

 手足をじたばたさせ、必死に抵抗するが蛇王は止まらない。

「サア、見セテオクレ!!」


「あ、お楽しみ中の所悪いんだけど~。」


「!!」

 蛇王の動きが止まった。

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 少女は息を上げながらへたり込んだ。

「・・・一体何が起こったの?」

 周囲を見渡す。

 すると、「謁見の間」に1人の少年が立っていた。

「ア、貴方ハ・・・魔王様!?」

「よう、久しぶり。元気してたか~?」

「アハ、アハハハ。ソレハソレハ、魔王様ノオ陰デ絶好調デ御座イマスヨ!」

媚びるように少年の傍に近づく蛇王。

「そうなの?そりゃ良かったわ。なんせこんな臭い所の統治誰もやってくれないんだもん。お前が居て助かってるわ~。」

「滅相モ御座イマセン。私ハ魔王様ノ忠実ナしもべ。魔王様ノ命令ナラバ何デモ致シマスヨ!」

 他愛の無い会話を行う二人。

 その光景を呆然と見つめる少女。

「そ・れ・じゃ・あさぁ~。あの子、貰えない?」

「エェ!?」

「今、人材不足で困ってるんだよね~。この子人間でしょ?丁度欲しかったんだわ~。」

 唐突な要望に慌てふためく蛇王。

「勿論オ渡シ致シマス!!」

「ありがと♪」

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