とある地方の昔ばなし ~飴玉くれなきゃ悪戯するぞ?~

みやま たつむ

第1話

 日照りにあったことがない穏やかな気候の農村では収穫祭をやっていた。

 あいにくの曇天だが出店をだしたりして、普段は静かで平和な村が、今日は活気づいていた。

 そんな雰囲気に呼ばれたのか、真っ白の布だけを纏った子どもがふらふらと寄ってきた。

 布きれ一枚しか纏っていない子どもを見て村人たちは隣町からきた子だろう、と嫌そうな顔をして子どもを見ていた。この村は仲間意識が強すぎて、よそ者はあまり好まないのだ。

 だが、そんなことを知らずに子どもはあっちへふらふら、こっちへふらふらと好奇心の赴くままにしばらく歩いていたが、ある一人の村人にこう言った。

「ねえねえ、あめちょうだい」

 だが、村人は無視して歩き去ってしまう。

 他の村人にも子供は声をかけた。

「ねえねえ、あめちょうだい」

 しかし、また無視をされてしまった。

 ねえねえ、あめちょうだい。あめちょうだい。

 手当たり次第に声をかけていくものだから次第に村人たちの対応もより悪くなってきた。ある者は睨み、ある者は舌打ちをした。ある者は握られた腕を強引に振りほどき、そのせいでバランスを崩した子どもは尻餅をついた。怪我でもさせてしまったら大変だというのに、村人たちは気にせず、声をかけられないように離れていった。

 そして、ある村人がこらえきれなくなって、こう言ってしまった。

「お前にやる飴なんかないんだよ。欲しかったら自分でとってこい」

 りんご飴を作っている出店を指さしてせせら笑った。隣村は不作続きでろくに買い物ができる状態ではないと知っていたから。

 しばらく子どもはきょとん、としていたが何かに納得したかのように一度頷くとにっこり笑って、こう言った。

「くれないんだったら、取っちゃえばいいんだね」

 村人は怪訝そうに首をかしげたが、いつしか子どもはいなくなっていた。


 翌日の朝。

 ある村人が外に出て、伸びをしてこう言った。

「今日はいい天気だなぁ」

 見上げる空には、雲一つない青い空が広がっていた。

 

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