put down a riot

「ウソやよ! それかノサカの陰謀やよ!」

「陰謀じゃねーよ」


 今年度最後のイベントになる春の番組制作会だ。5月にあるファンタジックフェスタを見据えてダブルトークの練習をしようという体の集まり。会場は初心者講習会と同じく星大の教室だ。

 今回、班は即興で作るし番組もその場での打ち合わせ。あんまりガチガチにやるというよりは、楽しく雰囲気をつかもうという感じ。班は機材補償費の500円と引き替えに引くクジで決定する。のだけど。


「なんでボクまたピントークなん!? ボイコットやよこんなん!」

「やれ。ミキサーが余るんだよ」

「あれだけゆーたやん、ピントークの人出んようにしよーゆーて。何でピントークの人出るん? それは百歩譲ってええけど、何でまたボクなん!? 意味分からんよ!」


 なんと、ヒロが2年連続ピントークになる班のクジを当ててしまうという強運ぶり。正直個人的には「ざまあ」という気持ちでいっぱいだけど、ヒロなら本当にボイコットをしかねないのでそこを何とかねじ伏せないといけない。

 確かに、ミキサーが一人なのと、アナウンサーが一人なのとでは大きく変わってくる。ピントークだろうとダブルトークだろうとミキサーのやることは派手に変わらない。そりゃ多少は違うけど、ビックリするような差はない。(個人の感想)

 だけど、アナウンサーからすればピントークとダブルトークではやることが大きく変わってくる。ピンなら一人で起承転結に沿ったトークをするし、ダブルトークなら進行のタテか広がりのヨコという役割を持って話を進めて行かなくてはいけない。


「ホンマ意味分からんよ…!」

「そうは言ってもお前が「ボク一番にくじ引くよ」っつって引いた結果なんだからもはや運命だろ」

「ノサカの陰謀やん」

「何度でも言うが陰謀じゃない」

「ピントーク嫌なんやよ! それじゃあボクがダブルトークの練習出来んくてこれからMMPに入ってくる子にダブルトーク教えれんくてもそれはボクのせいとちゃうよ! ノサカのせいやよ!」

「何でそこで俺が出てくるんだ」

「職権濫用してでもボクにダブルトークさせんかった罪やよ!」

「と言うか去年のファンフェスでやってるだろ」

「そんなん忘れたわ!」

「山口先輩に謝れ!」

「準備手伝え向島!」

「あっはいすみません」

「ノサカのせいでつばちゃんに怒られたよ!」


 一般参加者はまだ来てないんだからクジを引き直そうと思えば引き直すことが出来る。だけど、ピントークを出すなら対策委員からだろうという空気がそれを許さない。他のアナウンサーが変わってくれるような雰囲気でもないのだ。

 と言うかこんな時ばかりいっちょ前にアナウンス部長ぶりやがって。消去法のクセに。それを言ってしまえばおしまいだから言わないけど。泣いても笑っても今年のアナウンス部長はヒロなのだ。

 ただ、律とこーたはヒロがダメでもお前が指導すればいいとか平気で言いやがる。意味が分からない。俺にアナウンサーの指導すら投げようとするその神経が理解出来ない。確かに菜月先輩の姿を間近で見続けてはいたけどだなあ。

 大体、語彙力で言えば律、トーク力で言えばこーただって十分あるじゃないか。俺は所詮頭でっかちな偏屈理系男でしかない。遊びの番組だけど、こーたは何度だってマイクの前に座って――。


「そうだ!」

「どしたんノサカ」

「ヒロ、お前にダブルトークをやらせてやろう」

「えっホンマに!?」


 こーたなら話せばわかってくれるだろうし、他大学の人に迷惑をかけないで済む。ヒロに今言ってしまうとまた「何でこーたなんイヤやよそんなん!」などと騒ぐに決まっているので直前まで伏せておこう。


「はー、俺としたことがこんな簡単なことになぜ気付かなかった」

「どうやるん? 誰とやるん? ねえねえノサカボク誰と組むんかなあ!」

「どうなるだろうなー、楽しみだなー」

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