ステージの陰の世界
「みんなー、サドニナオンステージが、はっじまっるよー!」
サドニナのいつものヤツが始まった。Kちゃん先輩がいないとストッパーがいなくなるからどうしたかなー。まあ、ほっとけばいっか。まだ誰も困ってないし。Kちゃん先輩が来るまで好き勝手させて大丈夫だよねー。
今日は2月17日で、サドニナが勝手に制定したニイナデー。217でニイナの語呂合わせっていう単純な理由で決して誕生日とかではない。それと、3月10日もサドと読めるから第2次ニイナデーになるんだとか。あと旧暦の2月17日。
サドニナは歌って踊れるアイドル声優を目指して活動をしているらしいけど、成果が出たっていう話は聞かない。今はネット上で歌の動画を上げたりしてるけど、ネット界隈で有名になってたら調子に乗るはずだから今はまだ数字にも表れてないのかな。
今はサークル室の機材でサドニナオンステージ、つまりサドニナが歌って踊るショータイムを繰り広げている。Kちゃん先輩がいたらすぐ怒られて止められるけど、鬼の居ぬ間に。
「見て見てユキ! このマイク! ファーアクセがサドニナのかわいさを際立たせてるでしょー!」
「わー、かわいいー」
「ねっ、サドニナ可愛いでしょー」
「ファーがかわいいー」
「ユキー!」
サドニナの相手はほどほどに、あたしは植物園ステージの台本を読んでいる。まだまだこれで確定ってワケじゃないけど、流れはある程度入れとかなきゃいけないし。線を引いたり付箋を貼りながら、サドニナの歌に入れる適当な相槌。
植物園ステージは2年生が主体になってやることになっていて、次はあたしたちが引っ張らなきゃいけない。台本はKちゃん先輩に教えてもらいながらあたしも少しずつ書き始めていて、この難しさを実感しているところ。
サドニナは書くことに向いてないと言うか、Kちゃん先輩曰く“ステージスター”型なんだって。サドニナは本家ステージスターの足元にも及ばないって怒ってたけど。Kちゃん先輩の言う“本家”って誰だろう。
今度定例会の集まりっていうのがあったよね。ステージと言えば星ヶ丘だし、もし朝霞先輩が来るようだったら相談してみようかなー。台本を書くにもいろんなやり方を知ってた方がいいだろうし、どうせなら専任の人の話も聞いてみたい。
「ちょっとユキ! 聞いてるー!?」
「聞いてる聞いてるー、いいBGMだよー」
「BGMじゃなくてちゃんと聞くの!」
「はいはい」
ミキサーの練習だとサドニナオンステージに付き合わされているなっちゃんも、聞いているのかいないのか。なっちゃんが任されているのはサドニナから渡されているセットリストの通りに曲を流すという大事なお仕事らしい。
あー、何かもうサドニナより台本だよね今は。こんがらがってきちゃった。早くKちゃん先輩来てくれないかなー、サドニナオンステージの強制終了来ないかなー。BGMとしてなら別にいいけどちゃんと聞いてる場合ではないんだよねー。
「おはよう。――って、楽しそうだね」
「あっ、直クン先輩! ニイナデーなのでサドニナオンステージですよ!」
「あ、そっか」
「サドニナ可愛いですよね! 輝いてますよね!」
「あ、なっちゃんがミキサーやってるんだ」
「ひいっ……練習って言われて……」
直クン先輩が来たー! ってことは、Kちゃん先輩まだかなまだかな! サドニナの火消しは本来あたしの担当なんだろうけど今日はめんどくさいんだよ! ニイナデーのサドニナに関わると面倒なんだよ!
「ところで直クン先輩、Kちゃん先輩は……」
「啓子なら沙都子と一緒にもうちょっとしたら来ないかな。台本のことで相談?」
「あ、はいー……そんなところですー……」
「ユキちゃんは真面目だね。啓子が来るまではサドニナの相手をしてあげてもいいんじゃないかな」
「あ、はいー……」
……ま、いっか! ステージのことはKちゃん先輩が来てからで!
「サドニナ踊れー!」
「ユキ、次はバラードなの!」
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