光陰のターンチェンジ
「対策委員です」
1年生も交えて行われている対策委員。議題は、とうとう1ヶ月を切った春の番組制作会のことについて。春の番組制作会は、5月にあるファンタジックフェスタに向けたダブルトークの練習と各大学の交流という意味合いがある。んだけど。
「はあ……」
「ヒロ、あれはどーしたの」
「ああ、ノサカ? MMPの4年生追いコン終わってからこうやよ。『3年生の先輩とお会いする理由がもう卒業式までないだなんて!』……とかナントカゆーて」
「で、ですよねー……」
ここまで来ると野坂の3年生信仰は一体何なんだと。厳密には、3年生と言うよりなっち先輩と圭斗先輩に限定されてるんだろうけど。3年生の先輩に会える機会がひと月以上ないという現実にしょぼくれている、らしい。
「議長がこのザマか」
「ちょっとノサカ! そんな暗くされたら周りのみんなも滅入るわ。今は制作会の話せんといけんのやよ! 何考えとんの!」
「去年の制作会で披露された菜月先輩のダブルトークの素晴らしさについて考えていた」
「何ゆーとんの。そんなんよー覚えとるわ。去年の制作会なんかダブルトークの練習やっていう体なんにクジであぶれてピントークさせられたんしか覚えとらんわ!」
野坂が過去の栄光に、ヒロが恨みに忙しくしているけれど、今ここで採用すべきはヒロのような人をもう生まないようにするにはどうしたらいいか。ダブルトークの練習っていう体でピントークなのは確かにちょっと残念すぎる。
野坂が使い物にならないのは問題ない。だって割といつも会議の最初の方はいないし。委員長のアタシが会議を進めるのはいつも通り。議長は大事なところでさえ決めてくれればそれでいいというのが今年の対策委員のスタンス。
「ダブルトークの練習でピントークはホンマ空しいから絶対なしやよ!」
「わかった、わかったからヒロ落ち着いて」
「果林ホンマにわかっとんの!?」
「わかってるってば! ピンになりそうなときは対策委員から補充するとか、案を出して行けばいいんでしょ?」
「そうそう、ボクのような悲劇を生まんためにみんな頑張ろう」
ヒロの恨みはともかくこれも大事な話ではある。ミキサーはともかくアナウンサーがあぶれるといろいろ大変なのはわかる。1年生にもこの話を振って、さてどうしたものかと意見を出していく。
1年生がきゃいきゃいと意見を交わしている間にも、議長の発する陰鬱オーラが薄れることはなく。何て言うか今日に限ってはいない方がいいんじゃないかと思えるくらい。って言うか何をしても3年生の先輩に繋がるんだなあ野坂は。
高ピー先輩に言わせれば、悪い意味で野坂を野坂たらしめる物はなっち先輩と圭斗先輩の存在なんだそうだ。先輩がいないならいないで、と言うかいない方が野坂は自分で考えて動けるのに、と残念がっていた。なるほど、こういうことか。
「ノサカー、菜月先輩も圭斗先輩も死んだんと違うんやからええやん」
「バカかお前は! 勝手に殺すな! はあ……ひと月も先輩方にお会いできないなんて……」
「はー、せやからノサカは受け身でアカンわ。自分からご飯行きませんかーとか言って会う理由作ったらいいやん。アホちゃうの」
「俺の勝手な都合で先輩方に迷惑かけられるか」
「じゃあ対策委員とかには迷惑かけてええの」
「出来ればそれもよろしくないとは思うがお前にならどれだけかけてもお釣りがくる」
ヒロからの説教は続く。野坂がヒロに説教をするのはよく見るけど、逆転しているのはなかなか新鮮。
「ノサカが明るくするんは元がネクラやし期待せんけど、せめて普通でおってもらわな困るわ。これやから向島はーって一括りにされるんも嫌やし。大体ノサカなっちゃんからの熱視線にドン引きしとるけど、ノサカはなっちゃんの何倍もオーバーなんやし」
「ナ、ナンダッテー!?」
「そこ自覚ないとかアホちゃうの!」
全くだ。全員がヒロの「アホちゃうの!」には同意。
「ほら、国内なんかすぐ行けるんやから会議に参加するんやよノサカ」
「いや、俺とお前のフットワークを一緒にするな」
「はー、これやからノサカはアカンわー」
はー、これだから向島は! 会議が進まない!
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