アレンジレシピが追い付かない

「ただいまー。友達からジャガイモもらったー」

「えっ、アンタも!?」

「えっ、まさかお姉ちゃんも!?」


 家に帰ると、台所のテーブルにはごろごろと転がる大きなジャガイモ。同じような物を手にしたあたしはビックリして、アンタもと声を上げたお姉ちゃんの顔とジャガイモを交互に見る。

 テーブルの上にはジャガイモが30個ほど。こんなにジャガイモがあってもうちで食べきれるかなあ。あたしが10個でお姉ちゃんが20個。別々の日にもらってきたならよかったんだろうけど、まさか同日だなんて。タイミング悪すぎるよ。


「うそー、何でー!」

「友達がバイト先でもらったみたいなんだけど、帰省するからって分けてもらったんだよ」

「アタシもバイト先の同期が大量に押し付けられたからって押し付けられてー」


 ミドリから急に連絡が入ったから何かと思えば、「ジャガイモ要らない?」って。タカティがいればよかったんだけど実家に帰ってるみたくってさーと手当たり次第に連絡を入れてたら、釣れたのがあたしだったとかで。

 お姉ちゃんの方は、問答無用で押し付けられたみたい。なんかオレ様系? そんなような感じで偉そうな感じのピアニストの男子がいるらしいんだけど、その人がお姉ちゃんに「人助けをしろ」って言って現在に至る。


「旬だからかなあ」

「旬だからかもね」


 普段の買い物量でも上野家ではよくジャガイモに芽が生えてるし、30個もあったところで絶対芽が生えちゃう気がする。無駄にするのはもったいないし、どうしよう。

 でも1回の料理で使うジャガイモなんてゲンコツくらいの大きさなら2、3個。頑張っても5個くらいじゃないかなあ。蒸かし芋にしたって全然減らなさそう。

 あたしもお姉ちゃんも暮らしに関することを勉強する学部ではあるけれど、料理や栄養に関しては実は専門外だったりする。うーん、さと先輩だったら上手に料理してくれるんだろうけどなあ。


「はっ、さとこパッド!」

「どうしたの美雪急に大きな声出して」

「あたし今持ってる分先輩におすそ分けしてくる。絶対ムダにならないし」

「それでもアタシの20が残るよ。うちの分が美雪の10でよくない?」

「聞いてみるよ」


 さと先輩にさっそく聞いてみると、「いいのー? 助かるー」といい返事。さすがさとかーさん。たくさんありますよと言うと、「ジャガイモのレシピ考えてるところだったのー」とこれも歓迎されてるような感じ。

 こないだ履修のことについて相談したら、秋学期は食物とか栄養中心にするって言ってたもんね。研究熱心だなあさと先輩。趣味なのかな。でも妹のうたちゃんがあんまりご飯食べないみたいなこと言ってたから、穀物を少しでも食べやすく、みたいなことかなあ。

 うちの分がミドリからもらった10個。お姉ちゃんがもらってきた分の20個をさと先輩に。よいしょ、っと。重たいなあ。って言うかお姉ちゃんはよくこれをバイト先から持ち帰ってきたよね。


「美雪ー、ポテサラにする? それともカレー?」

「お姉ちゃんが作ってくれるの?」

「美雪が作ってー」

「えー」


 うちのお姉ちゃんはこれだもんなあ。うちの分の10個もさと先輩にあげたら料理になって戻って来ないかなあ。出来なくはないけど得意じゃないもんなあ。大体お姉ちゃん洋食屋さんでバイトしてるんだから見よう見まねで何か出来ないのかなあ。

 スマホに通知が入った。さと先輩から「いつにする?」って。あたしは今すぐでもいいくらい。さと先輩の家は近くないけど、電車を乗り継いで行けない距離じゃないし、夕飯までにはきっと帰って来れるから。


「あたし出かけて来る。ご飯までには帰るから。よっこいせ」

「がんばれー」

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