おめめぱちくり気になる木

「最近さ、機能性表示食品? とかっていうのよく見るよね」

「あー、あれだろ、国の審査は受けてねえけど一応それっぽい効果は期待出来ると思う、くらいのヤツ」


 とある休み時間、ばったり会った高ピーとお茶をしながら他愛もない話を。それを切り出したのは慧梨夏だった。何をどうしてそんな話が。まあ、また急に何かを思い出したんだろう。


「目にいいのとか気になるよね」

「目だったらブルーベリーとか、メグスリの木がどうたらってのは聞いたことあるな」

「最近だとルテインっていうのが何かいいとか何とかって」

「お前もよくわかってねえんじゃねえか」

「まあね」


 慧梨夏は普段メガネじゃないから知らなければわからないだろうけど、実は視力がめっちゃ悪い。確か0.1なかったはずだ。視力0.1未満って、1.5と1.2の俺からすれば想像もつかない世界だ。

 だけど、目の酷使を気にするならお前はまず生活をどうにかしろとしか言えない。ゲームかパソコンから光をバッシバシ浴びてんだ。ブルーライトカットがどうした。


「やっぱ現代人だからさー」

「現代人がどうこうじゃなくてお前の場合生活だろ」

「高崎クンにもそれを言われちゃなあ」

「伊東にも言われてんだな」

「言ってる言ってる。つか慧梨夏お前パソコンとかゲームの光浴びすぎて夜も変に目が冴えて寝れねーっつってんだからさっさとコンタクト外せっていつも言ってんだろ」

「あっ、そう言えば最近CMでぐっすり寝るサプリ的なのやってるよね」

「寝るためにわざわざサプリ飲むとかアホくせぇな」

「そりゃ高崎クンはね」


 高ピーと言えば、寝ることが趣味のような人で、どんなに少なくとも5時間は寝ないとその後1週間の生活リズムに支障が出てしまう。って言うか意外に繊細なんだよな高ピーって。

 ぐっすり眠れるとか朝の目覚めにいい影響を与える機能性表示食品っていうのも最近はちょいちょいと聞くようになってるけど、慧梨夏はそれにも興味があるようだ。


「お前の場合はちゃんとオフはオフって切り替えることからだろ。コンタクト外せ」

「だってー」

「友達にもいるんだよ普段コンタクトの子。部活でステージの台本とかめっちゃ書く子なんだけど、メガネはホントのオフの時だけだし、コンタクト外したらめっちゃ眠くなるから作業できないって言ってた。お前も似たようなモンだろ」

「あー、そういやいるな、メガネがオフっつーヤツ」

「って言うか作業しなきゃなのにコンタクトを外す意味が分かんない」


 ですよね! 知ってたけど慧梨夏っつーのはそういう奴だよ。ワーカホリックって連中はこれだから。あっ、別に前述の某友達のことをどうこう言うつもりはなく。その辺はそちらの学校でどうにかしてもらって。


「なら、しっぽ解きゃいいんじゃねえのか。知ってる奴に、普段は結んでるけどオフは大体髪下ろしてるっつー奴がいる」

「うち、別にいつもかもポニーテールってワケでもないよ」

「知ったこっちゃねえ」

「なあ慧梨夏、寝る時間削ったりエナジードリンク暴飲してたら最悪死ぬってSNSとかでもよく見るだろ」

「まあねー。てかうちエナジードリンク飲まないよ」

「サプリに頼るのも悪じゃないけど、目が疲れるとか目が冴えるとか、まずは生活を整えてから言えっつー話な」


 むすーっと、わざとらしく慧梨夏は両の頬を膨らませる。いや、つかそこお前が不貞腐れるトコじゃねーしなそもそも。

 何だかんだ俺と高ピーはちゃんと睡眠時間は取ってるし、ディスプレイの前にがっついたりはしていないからこの話題にはどことなく余裕がある。

 ただ、目や睡眠がギリギリのところまで来ている現代人は慧梨夏も含めてまあまあいるのだろう。だからこそそんなサプリに需要があるんだろうし。某友達……死ななきゃいいけど。


「でもうちはまだ眼精疲労から頭痛とか吐き気に至ってないだけマシだよね」

「うわ、想像するだけでツラっ」

「片桐さんがさ、結構大変みたいでー」

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