机下の隠密行動
「ゴティ、どうしたらええんかな」
「しばし様子見じゃね? 冷静な判断出来るの多分俺とヒロだけだし」
ファンフェスん時からちょっときな臭いとは思ってたけど、ここまで来るとガチな地雷ってヤツなんかなー。俺たち対策委員の置かれた状況を、一歩引いて見てみる。やっぱり、異質だ。
これが定例会なら、インターフェイスに加盟してる人なら誰でも会議を見に来ていいってことになってるからわかる。だけどここは対策委員だ。講師候補でもなく、前対策委員でもない三井サンがいるってーのはちょっとおかしい。
三人娘は見るからにイライラしてるし、特に短気な果林とつばめはいつ大爆発してもおかしくない。ツカサは女子に怯えてる。野坂はこの人をくっつけたまま会議に来てしまったことに対する罪悪感か、顔が青白い。ヒロは普段通り。
「だからね? 1年生の子たちが最初に受ける講習なんだから、生きた講習の方がいいんだよね。実際の現場ではどんな風にしてるかとか、やっぱりプロの技術! 普段はまずお目にかかれない人の話を聞く機会じゃない」
「ねえねえ、だからアンタ話聞いてんの? 初心者講習会の話だったら大体一本化してんの」
「つばちゃんラジオとか興味ないからしょうがないよね。プロの人の話とか聞いてもわかんないかもしれないけど、とにかくすごいんだよ」
「は? アタシ、バイトラジオ局のADなんですけど」
「へー、どこのコミュニティ?」
ちなみにつばめがバイトしてるのはコミュニティどころじゃなく、新聞のラジオ欄にも載ってる普通にデカいAMラジオ局だ。
だからここにいる中じゃ三井サンも含めて最もプロに近いのがつばめで(現に金もらってミキサーしてるし)、プロと触れ合う機会が最も多いのもつばめだ。
「アンタ人の話も聞かずにテキトーなことほざいてくれちゃってるけど、その調子でプロ講師がどうこう言っても説得力皆無! 大体、会話が成立しないのにアンタどーやってプロの人と話するワケ? こっちの言いたいこと絶対伝わんないよね。却下却下! なしなーし。はい、お帰りくださーい」
「ちょっと、ロイはちゃんと後輩の教育してんの? 指導力に難有りでよくPなんてやってるよー」
「うっせーな、そうする意味のある人にはちゃんとしてるっつーの。アンタ自分にそうされるだけの理由があるとでも思ってんの? ちょっと自分の思うように人が動かなかったら人の所為にして、楽な仕事だねー」
「ちょっ、つばめこれ以上はやめとけ。三井先輩も一応先輩だから」
「別にアタシの先輩じゃないけどね。次ウチの人コケにしたらマジぶっ飛ばすかんな、調子扱くなよ」
これでつばめは通常運転だって言うから星ヶ丘は物騒だ。何がどうしてこうなってるのかっつったら、三井サンが初心者講習会の講師としてプロの人を勝手に招聘したとかそんなようなことだ。
もちろん俺たちはそんなことを頼まないし、講師も講習内容も一本化しつつあった。無視をしようと思えば全然出来る。そうするには、三人娘と野坂に早いとこ平静を取り戻してもらわないと。
「つかヒロ、三井サンに指導力ってあんの?」
「そんなんあったらボクもっと上手なアナやよ」
三井サンとつばめがバトる陰で、こっそりと聞いてみる。ヒロがサラッと言った答えにちょっとウケる。
「とにかく! もう話はついてるから」
「三井先輩、そんなことを言われても困ります。断りの連絡を入れてください」
「何で? せっかくスケジュール調整してもらったのに。普通にやってたんじゃまずない機会だよ? だから野坂、後は俺に任せといてよ、ねっ!」
「いえ、ですから」
「大丈夫大丈夫、講師決まってる人にはこっちから連絡しとくよ。へーきへーき」
「だからテメー人の話聞けっつーの!」
「つばちゃん、聞いて欲しかったら聞いて欲しいなりの態度しなきゃ」
「テメーが先に態度で示せよ、三井センパイ」
講師の先輩に連絡が行く? カズ先輩なら大丈夫だとは思うけど、一応先手打っとくか。みんなの視線がつばめと三井サンに向いてる隙に、机の下でこっそりと。よし。明日にでも直接カズ先輩と話すことにしよう。
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