夢と希望とプレゼンテーション
「対策委員です。さて、野坂の遅刻がたった15分という奇跡を生かして会議を進めましょう」
さて、俺がいようがいまいが議事進行は委員長の果林が主に進める対策委員だ。これは、進行役は毎回同じ方が落ち着くしお前は大事なところでビシッと決めてくれればそれでいいと対策委員のみんなから諦められた結果だ。
「前回までのおさらい。初心者講習会の講習内容については粗方まとまったよね。インターフェイスにおける学生ラジオについてと、技術的な基礎。ラジオとステージ共通のポイントもあるといいねみたいなこと。実際の番組を見せつつ。日付は来月11日、場所は星大。月末にイベントを控えてる青女が今ちょっと辛いってことなんで、啓子さんのフォローをしつつ」
「――となると、次は講師か」
「ですね」
委員長果林の段取り良すぎか。そして話は最重要項目と言える講師に入っていく。初心者講習会の講師は基本的に各大学の先輩にお願いすることになる。実力や人柄なんかでお願いするのがほとんど。
実は、ミキサー講師に関しては前回の会議までに緑ヶ丘の伊東先輩にほぼ一本化出来ている。だから今日に至るまでの間に仮交渉を数回行わせていただいていて、既に前向きな返事はもらってある。
「って言うかいつの間に」
「ゴティから簡単にお願いはしてあって、あとは俺が直接」
「ほらやっぱミキサーは悩む必要ないからラクなんやよ!」
「簡単に言うなヒロ。伊東先輩が快諾してくれたからともかく、断られてたら路頭に迷うんだぞ。ほら、アナウンサーの講師の話に戻るぞ」
さてアナウンサー講師はどうなる。インフォの青女と呼ばれるだけあって、インフォメーション放送の講習は青女の先輩からお願いしたいとはまとまっている。その辺は啓子さんがヒビキ先輩に交渉をしてくれているそうだ。
すると、全体講習やアナウンサーの講習はどうなるという話になるのだ。どの先輩も甲乙付けがたい。いや、誰がどんな予定なのかもわからないし誰に対してもこれこれこうだからお願いしたいんだとこちらの熱意を伝えて、しっかりお話ししたいけど。
「トータルで見るならやっぱり高崎先輩が圧倒的なんだよなあ。箔もあるし」
「無難ですよねー。あと、アナウンサーと言えばユノ先輩に一応ナルミー先輩。なっち先輩圭斗先輩、大石先輩、坂井先輩もいたよね。ヒビキ先輩は出てるから、ヒメ先輩アヤネ先輩、あとは山口先輩に朝霞P先輩? 長野先輩は入院しちゃったし」
「朝霞サンと洋平はないな。あの人らラジオさっぱりよ? 朝霞サンに至ってはアナですらないし」
「さすがつばめ、身内だけに辛辣」
「ヒメ先輩とアヤネ先輩も最近は見ないなあ」
「ああ、やっぱり3年生にもなるとそうかー」
「千尋先輩は最近フィールドワークばっかりだし、大石先輩も厳密にはPだからアナウンサー講師としては怪しいかも」
「そっかー」
と、頭数は豊富なアナウンサーだけど、あれよあれよと講師候補は絞れてしまう。結局緑ヶ丘と向島に収束するのだから、最終的にはミキサーと同じだけ悩むのに苦労しなさそうだ。
「結局、高崎先輩に菜月先輩、大穴で圭斗先輩に落ち着くのか」
「野坂、高ピー先輩が本命でいいんでしょ?」
「ああ、その方向で頼む。果林にお願いしてもらって、高崎先輩の都合のいい日に俺も直接伺ってお話をさせてもらうし。もし合意に至れば後日講師の先輩方の顔合わせと、講習内容のすり合わせをして」
少し怖いけど、先輩方にお願いするのは楽しみでもある。3年生の先輩にはそれぞれに異なる長所がある。それを1年生には本当に見てほしいし、先輩方には伝えてほしい。本当は全員のそれを並べてパワポでプレゼンしたいけど、初心者講習の域を越えるのが残念でならない。
「野坂、ちょっと議長っぽい」
「そ、そうか? まあ、遅刻してるからちょっとは頑張らないと」
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