育てる喜びをあなたと
「慧梨夏サン慧梨夏サン、今日は何の買い物ですかー?」
「着いてからのお楽しみー」
とある日の練習後、1年生2人と尚ちゃんを車に乗せ、向かっているのはホームセンター。ただ、ホームセンターとはまだ言ってない。だって、着いてからのお楽しみっていう体だからね。
「何で俺もついて来させられたんですかー、
「だからこそだよ。普通の人の感性を大事にするための尚ちゃんなんだから」
「俺、言うほど普通じゃないんだけどなー」
かわいい顔をしてぶつくさと文句を言っているのが2年生の
1年生は
「よし、着いた!」
「ホームセンターじゃん?」
「慧梨夏サン、日曜大工でもするんですか?」
「今からここで、美弥子サンの誕生日プレゼントを揃えます!」
「こんなとこで揃うんすか?」
「ふっふーん、揃うも揃う。義妹ならではのセンスよ!」
「そこまで決まってるなら一般の人の感性もクソも」
「尚ちゃん、そのかわいいお口を鵠ちゃんに塞いでもらっちゃおうかー」
「サーセン黙ります」
うっきうきと先陣を切るのはさっちゃん。大学に入ってホームセンターに来るとは思わなかったです、ときょろきょろしながら歩いてる。欲しい物は決まってるけど、とりあえず1周してみようか。
すると、鵠っちがきょろきょろとして、何かに惹かれている様子。家財道具をいろいろ探すのは手伝ったけど、まだ家の物で足りない物でもあったかな。
「慧梨夏サン、今ここで自分の買い物すんのアリすか」
「どーぞどーぞ。何かいいものでも見つかった?」
「そろそろ暑くなってくるし、簾とゴザマット、いいじゃんと思って」
「いいねー、夏支度だねー」
本題は建物の中じゃなくて外だったりする。それなら最初から中に入らなきゃよかったんじゃって思うけど、そうじゃない。中を回ることでネタとかアイディアが降ってくるかもしれない。創作とか企画ってインプットも大事だから。
目の前には、プランターと土。そしてタネ。見たまんまの園芸コーナー。必要な情報はあらかじめインターネットで調べておいた。どんな環境で、どのように育つのか、諸々のことを。
「鵠っち、そっちの白いプランターを2つと、あっちの土持ってきてくれる?」
「うす。花でも育てるんすか? それにしても深いプランターじゃん?」
「美弥子サンにはお花よりもこれ」
うちが手にしたのは、ネギの種。美弥子サンと言えば泣く子も黙る薬味狂。元々伊東家って結構ガッツンガッツン薬味を使う家なんだけど、この美弥子サンがまあすごい。ネギとかショウガとか大好きだよね。
「うわ、出たー」
「出たとか言わない尚ちゃん!」
「ネ、ネギなんてプレゼントされて誰が喜ぶんですかあ!」
「三浦、お前さてはネギ嫌いか」
「大っ嫌いだよ! 辛いし、おいしくないじゃん!」
ここに来て大変な事実が発覚しちゃったかも知れない。さっちゃんはネギ嫌い。さて、近く開催される美弥子サンの誕生祭、もといネギ祭り。果たしてさっちゃんは生きて帰れるのか!
「さっちゃん、GREENsにいるなら覚悟した方がいいかもしれない」
「何をですか…!」
「さっちゃんは遠くない未来に薬味狂・伊東美弥子に恐れおののくよ…!」
「マジあの人ネギ教の教祖だから。くげ、お前も覚悟しとけ。ビビるぞ」
「あ、尚ちゃん炭も買わなきゃ」
「あー、ホントっすね忘れるトコっした」
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