しんどみマックスマジパねえ
「う~……」
「なんだ宏樹、シケたツラしてんなあ!」
「しーっ」
ヒデさんが口に当てた人差し指が示すことは、それ。ヒロさんに絡みに行ったツルさんは、この不発に不満たらたらなようで、つまらなさそうにしている。
「ヒデさん、ヒロさん大丈夫なんすか」
「俺は病院に行った方がいいと思うんだけど、ヒロは行かなくていいの一点張りで……」
「宏樹のヤツ、男のクセして病院嫌いとは女々しいなあ」
「朝倉……回復したら、覚えといてよ」
「やっと喋ったと思ったら。ヒロ、大丈夫なの?」
青白い顔をしたヒロさんが、いろいろな念のこもったおどろおどろしい目でツルさんを睨み上げている。まるで地獄の縁から沸き上がってきたかのような。それがそういう説得力を持つのは、ヒロさんが呪いの民俗学なんてのを専攻してるからっすね。
元々AKBCはそこまでがっつりと活動をしている方じゃないけど、今サークル室にいるこの3人の3年生の先輩はレギュラーメンバーだという印象がある。そして、毎年サークル存亡の危機が訪れてるらしい。今年も例外になく。
「ハマちゃん、千鶴と何かやっててくれる?」
「はいっす! でも何しましょう」
「えーと、そうだね……」
自販機ほどの背丈でなかなかの恰幅の良さをしながらも、言動が控えめなのがヒデさんこと
ヒロさんに絡んでたのがツルさんこと
そして、さっきから机に伏せて具合が悪そうにしているのが俺が尊敬してるヒロさんこと
あと、うちのサークルをまとめてるのもヒロさんだ。ヒロさんの指示に従って動いてる面も少なからずあるんで、ヒロさんがこうだとみんなが路頭に迷っちまう。いや、ヒロさんが悪いんじゃなくて、やることくらい自分で考えれっつーことだな。
「そうだツルさん、新入生勧誘VTR作るっす! 実際に使う使わないはおいといて、短い時間で効果的な映像を作る練習にはなるっす!」
「そりゃいい暇潰しだ。やろうか」
ヒロさんは相変わらず机に伏せて辛そうにしている。そこまで具合が悪いなら無理しないで家で休めばいいのに。ヒデさんがついてるから大丈夫だとは思うけど、ヒロさんしんどみマックスって感じでパねえっす。
「宏樹のヤツ、どーせ呪詛返しに遭ってんだろ」
「俺は、実際には呪わないし……」
「わ、喋った! 何でアタシへの反論だけ喋るんだ!」
「そもそも千鶴って、呪いとか、信じてなくなかった?」
「そりゃそーさ! 呪いだのユーレーだの都市伝説だの、そんなモンはトリックだ! みんな作れるんだ! それを宏樹だの秀悟だのは」
「……朝倉、うるさい」
そして再びヒデさんが人差し指で空間を征する。控えめだからこそ逆にしーっていうボディランゲージに説得力があるんすかねー、パねえっす。
「……ヒロ、やっぱり病院行かない?」
「まだ大丈夫」
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