髪を切ったから

 失恋した。


 髪を切った。


 一世一代の告白だった。


 「ごめん、好きな人がいるんだ。」


 そんなことは知らない。


 そんなことは聞いてない。


 私のことはどう思ってるの。


 どうして私はふられたの。


 髪を切ると男の子みたいと言われた。


 それから眉を細く整えた。


 少しダイエットもしてみた。


 髪を少し赤く染めた。


 ネイルをはがし、爪を丸くした。


 ガーリーなワンピースから、カジュアルなメンズのシャツとデニムに着替えた。


 失恋したから髪を切る。


 そんな古風な女じゃないの。


 気づいてしまった。


 見つけてしまった。


 鏡の向こう側には、そう、


 そこには彼がいた。

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