だから僕は君が好き
今日は雨。
教室から見る景色には、雨の匂いが染みついているみたい。
なんて詩人ぶってはみるけど、ポエムってがらじゃないんだよね。
「雨は嫌いかい。」
クラスの男子が話かけてきた。
結構イケメンなんだけど、僕って頭良いでしょう的なねちっこい話ぶりが嫌なやつなんだよね。
そこが良いって物好きもいるんだけど。
『雨よりあんたが嫌い』って言ったらどんな顔するんだろうって思ってはみるけど、そこまで私は嫌な奴じゃないし。
「雨が好きな奴なんて、いないっしょ。」
「そんなことないよ。雨が降らないと水不足になってしまうし、植物だって枯れてしまう。そうなると地球温暖化はますます深刻となり、やがて地球は砂漠の星となるだろう。」
『なるだろう』って論文か、たかだか挨拶がわりの天気の話が、地球滅亡になるなんて、だからこいつは嫌いなんだよ。
テラフォーミングして火星に行っちまえ。
「まあ、極端すぎる話は置いておいて、ほら、天気が良いと嬉しかったり楽しかったりするのは、雨や曇りがあるからなんだよ。晴れが続けば嫌になるし、晴れそのものの魅力だけではないと思うんだ。」
まあなんとなく分からなくもない。
もっとも私は雨が嫌いとは一言も言ってないんだけど。
「人だってそうだよ。美人っていうのは相対的な話であって、人間が独りしかいなかったら、その人は美人ではないんだよ。」
まあなんとなく分からなくもない。
「つまりだね、非美人がいるからこそ美人が引き立つのであって、美人の魅力とは非美人の魅力があってこそなんだよ。」
まあなんとなく分からなくもない。
ただコイツは何を力説しているんだ。
「さらに言えば、本当に魅力的なのは非美人なんだ。」
コイツは何が言いたいんだ。
「だから・・・だから僕は君が好きなんだ。」
だから私はコイツが嫌いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます