遅刻

「すみませーん、遅刻しちゃいました。」

 おどけて彼が教室に入る。

 クラスのみんなに笑いがおきる。

 私ももちろん笑っている。

 彼を堂々と見つめられるチャンスだから。


「何で工事なんかしてるの。」

 いつもの通学路がつかえない。

 随分と遠回りになった。

 急がないと遅刻する。

 走る私の目に飛び込んできたのは・・・、彼の姿。

 ここが彼の通学路か。

 これはチャンスと近づくと、彼の隣には知らない女の子が並んでいる。

「いつも遠回りして、遅刻じゃないの。」

「学校違うから仕方ないだろ。お前に会えるんだから遅刻したっていいんだよ。」

 私は無言で駆け抜けた。

 彼は私に気が付いただろうか。


「すみませーん、遅刻しちゃいました。」

 おどけて彼が教室に入る。

 クラスのみんなに笑いがおきる。

 私はもう笑えない。

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