どうして好きになるんだろう
うららかな春の日差しに満腹が手伝って、まどろんでしまう昼下がり。
「どうして好きになるんだろう。」
一人の少女が突拍子もないことを口にした。
「好きってナニ、男のハナシだったりする。」
もう一人の少女が答えた。
初めに口を開いた少女がうなずく。
「だってホラ、そこいらのカップル見てると、こいつのどこが良かったんだろう。ってよく思うじゃない。」
共感はするが、人としてうなずいていいものか悩む発言だ。
「まあ、当人同士にしか分からないことってあるよね。」
「まわりにもっとカッコイイ人はいないの、って突っ込みたくなったりするし。」
「まあ、人は見た目じゃないからね。」
「でも、そもそも見た目が悪い人と仲良くなるきっかけがないじゃない。」
なんて身勝手な意見だろう、と思いつつも否定はできない。
「恋愛なんて所詮は妥協なんでしょう。誰もがイケメンでお金持ちが良いけれど、どこまで我慢できるかだよね。」
少女は腕組みをして考える。
「妥協だとしたら『好き』じゃないし。そもそも結婚しなきゃダメなら妥協も必要だけど、付き合うだけなら妥協なんて必要ないし。さらに言えば、結婚目的じゃないなら、付き合う必要もないんじゃない。」
「まあそうだね。そう思う人が多いから少子化なんじゃない。」
「なるほど、ウチら社会派なんだね。」
浅い社会である。
しかしながら、異性を求めなくても同性で楽しければ良いと考える人が増えているのは多分そうだろう。
「結論から言うと、ウチらは妥協なんてしないってことだね。」
「そういうこと。」
すると突然、男性が声をかけてきた。
「来た来た、紹介するね、あたし彼氏できたんだ。」
男性は背が低く、ボサボサ髪で、お世辞にもイケメンとは言えない。
「だ、妥協かな。」
「ナニ言ってるの、妥協なんかしてないよ。あたしは彼に夢中なの。」
しばらく沈黙が流れた。
「どうして好きになるんだろう。」
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