セキセイインコ

「ねえ、『セキセイインコ』って漢字で書けるかな。」

 クラスの男子へのムチャぶり。

「そんなの書けるわけないだろう。一文字も思いつかないよ。」

 そうだろう、国語が苦手ってことは百も承知なのだから。

「書ける人ってどんな人だろうね。」

「そうだなあ、太ってる人と痩せてる人だとどっちだろうなあ。」

 斜め上の会話に返答が止まってしまった。

「何で太ってるとか考えるかな。体型は関係ないじゃない。まだ漢検一級の人とか言ってよ。」

 彼は軽く腕組みをする。

「でもテレビだと二級位までしか出ないから。一級の人って都市伝説じゃないかな。」

 あんたの頭が都市伝説じゃ。

 このままじゃ埒が明かない。

「どんな人が書けるのか教えてあげるよ。それは君のことが好きな人だよ。」

 そう言って私は彼のノートにサッと書いた。


ー背黄青鸚哥


 胸の鼓動が収まらない。

 私は一度目をつぶって、そっと彼の顔を見た。

 彼はポカンと口を開けている。

「なあ、これって何て書いたんだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る