恋愛綴り

茶太朗

僕と彼女とキャラメルと

 今日は遠足、高校生にもなって山登り。

 新緑を通した冷たい風が気持ちいい。

 毎日狩りをする為に、山の中を駆け回っているはずなのに、すこぶる足が重たくてしようがない。といってもゲームの中の話だからリアルなら当り前のことだ。

 前を行くのは憧れのあの娘。肩にかかる髪が木漏れ日でキラキラしている。さりげなく歩幅を合わせて、同じ空間にいられる幸せを感じている。しかしこんな細い手足なのに、なんて軽い足取りだろう。気を抜くと離されてしまいそうだ。

 ふと足元に目をやると、リンドウが咲いていた。澄んだ透明感のある青い花、背丈が低く目立たないからこそ、見つけたときに嬉しくなるし、僕だけが秘密を手に入れた気になる。そんなリンドウが大好きだ。

ふとあの娘が振り返った。目にかかった長めの前髪が翻り、大きな澄んだ瞳がのぞく。

とても綺麗で吸い込まれそうな瞳なのに、いつも前髪で隠している。たまに垣間見る瞳は、、そうリンドウのようだった。

「大丈夫、ずいぶん疲れて見えるけど。」

「なに言ってるの、元気いっぱいだよ。」

 君の瞳とその声で元気になった、とは言えないけれど。

「キャラメル食べる?元気でるよ。」

 彼女はポケットから取り出したキャラメルを一粒、僕に軽く投げてくれた。

「ありがと。」

 そっと口に入れたキャラメルは、いつもより甘かった。

「あっ先輩、キャラメル食べませんか。」

 そっと両手で差し出す彼女、その手を握るように受け取る先輩は学校一のイケメンだ。

 彼女の頬がかすかに染まり、今まで見たことのない位に可愛い顔になっていた。

 口に入れていたキャラメルは、いつもよりほろ苦くなっていた。

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