第7話 訓練前2
「うぅ…」日の光によって少しずつ目が覚めていく。
ゆっくり体を起こして当たりを見渡すように首を動かす。
「あ、そっか、ここ俺の家じゃないんだった…」何時もと違う事に納得した俺はゆっくりと立ち上がる。夏まじか日のの光が部屋に入っている。
「ふぁぁー」両手を天板の方へ伸ばしてアクビをしながら伸びをする。日の光から見て、まだ6時から7時といったところかなぁと当たりをつけて部屋を出た。
食堂に近付くにつれて食器などを用意しているようなカチャカチャという音が大きくなっていく。
俺は食堂の扉を開けて「おはようぅ…」とアクビを噛み殺しながら言った。
返ってきたのは静華と月視、亜沙ちゃんと母さん、侍女2人の朝のあいさつだった。もちろん全員浴衣姿である。
「お、断矢君も起きたね」後ろを振り向くと深い緑色の浴衣を着た視信さんが立っていた。
「おはようございます、視信さん」軽く頭を下げた挨拶をする。
「うん、おはよう。そうそう、哲人ならちょっと用事があるとか行ってどっか出ていったよ」
「ええ、知ってますよ〜」母さんは調理する手を停めずに視信さんの呼びかけに答える。
親父は居ないのか。順当に考えるなら俺と亜沙ちゃんの教官的な人をに呼びに行ったと言うのが自然か。
「はいはい、座って頂戴ね〜」母さんがおっとりした声で呼びかける。
各々が昨日と同じ位置に座る。
朝食はハムエッグにトーストと牛乳、それとキャベツとトマト等を和えたサラダだった。
「そう言えば視信さん、学校ってどうなってます?」牛乳を飲み終えてふと思ったことを聞いた。食堂に備え付けの時計を見るにまだ余裕で間に合うような時間だ。
視信さんはさっきまで食べていたトーストを牛乳で流し込む。
「学校なら昨日のテロで半壊したらしいよ」
俺と月視、静華があんぐりと口を開ける。まさに開いた口が塞がらないといったふうに。
「視信さん、それホントですか?」
もう少しで今口に含んだ牛乳を吹き足すとこだったぞ!?
「うん、先生達も復帰するのに忙しくてろくに課題も出してないみたいだね。詳しく知りたかったら調べてみるといいよ。直ぐ出てくるはずだからね」
すると静華がスクリーンを操作するような動作をする。
「…ホントみたいですね。私の行ってる中学は半壊、兄さん達の行ってた高校は一部全壊みたいです」
…ちょっと待て、今おかしい言葉が聞こえた気がする…、一部全壊!?
「と、学校の話はとりあえず置いといて」
「断矢君、君は『マリフィツァ連邦』に選ばれたんだけど、学校からなにかメールみたいなものは来たかな?」
「…?」視信さんの発言に疑問を覚えながらもスクリーンを手元に開いて何か来てないか確認するが、何も来ていない。
「いえ、何も来てないですよ?」スクリーンを消して顔を上げる。
「やっぱりそうなってたかぁ…」視信さんは俺の答えに落胆したように下を向いてしまう。
「どうかしたんですか?」
「いやね、普通は何かしらの通達が来るはず何だけど、多分断矢君、君の存在が学校から忘れられてるよ」
……学校から忘れられてる?そんな馬鹿な……学校だろ?生徒を忘れるって…。
「まぁ、君の体質とか“能力”からして、有り得なくはむしろ有り得るからね…と、言うよりは現に起こってるしね」
さ、流石に学校から忘れられるって…心に来るものがある……。
俺は目に見えて落ち込んだ。
「ただ、大丈夫だよ。私から言っておいたから」
「ホントですか!?」
「うん、どうせそんな事になってるだろうと思って先生に伝えておいたよ」
「ありがとうございますって言えばいいですかね…この場合…」
「これくらいなら礼は要らないよ。哲人から頼まれたことだからね」
「親父が?」
「うん。アレで心配性だからね」
視信さんとそんな会話をしていた時、突然、食堂の扉が開いた。
「誰が心配性だって?」
親父ー緋野 哲人ーが入ってきた。
「親父、おはよう」食べる手は視信さんとの会話の時から止めていたので、とりあえず挨拶をする俺。それに続いてほかの皆も挨拶をした。
「ああ、おはよう断矢」
視信さんは椅子に座ったまま、親父の方を向いた。
「哲人、帰ってきたんだね」
「さっきな」そんな言葉とともに親父も昨日と同じ席に着く。
「哲人さん、はい」と母さんが用意していたのか俺達と同じメニューのプレートを親父の目の前に置いた。一つ違うところがあるとすれば牛乳がコーヒーに変わっているところぐらいだった。
「ありがとう、梓」親父は朝食を食べ始めた。
トーストとハムエッグを食べ終わって一旦手を止めた親父が俺と亜沙ちゃんの方を向いた。
「断矢、亜沙ちゃん午前10時に中庭に来てくれ。昨日言ってた訓練を始めるからな」
「分かった。一応、小太刀は持っていった方がいいかな?」これは聞いておかないと後で大変な目に会いそうな気がした。
「…一応持っていっておけ、亜沙ちゃんも一応着替えておきなさい」
「分かった」「…わか…った…」俺と亜沙ちゃんは頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます