出会う、聖夜。

 整った顔立ち。

 完璧なスタイル。

 ちょっと低めの美しい声。

 コートに身を包んだ生徒会長が、私だけを見て優しく微笑んでくれていました。

 会長に会いたい。その気持ちが私に夢を見させてくれているのでしょうか。これは神様がくださったクリスマスプレゼントなのでしょうか。

 でも、この肌寒さは夢では味わえない気がします。信じられませんが、目の前の光景は現実なのだと思います。



「……桐嶋零きりしまれいさん」



 試しに生徒会長の名前を呟いてみます。すると、



「はい。甘粕胡雪あまかすこゆきちゃん」



 会長は私の名前をはっきりと言ってくれました。二学年下の一般生徒の名前を知ってくれているなんて。感激のあまりに涙が出てしまいます。

「ごめん。こんな夜中に来ちゃって、迷惑だったよね」

「……そんなことないです。会長と話すことができて嬉しいんです。夢でも、現実でも会長と会えたことが嬉しいんです」

 せっかく会長と話せるのに、緊張と感激で声が震えてしまいます。まるで初めて会う人と話すように。いえ、今、ここで初めて出会ったのでしょう。

 今までもクリスマスは特に好きなことでもなくて。もう、今年なんて最低のクリスマスとして終わるんだろうと思っていたのに。

 あるはずがないと思った魔法がかかった。生徒会長に会えるという魔法にかかった。最低のクリスマスは最高のクリスマスになったのです。

 そして、午前0時を迎えました。



「……誕生日おめでとう、胡雪ちゃん」



 会長はそう言うと、私のことをそっと抱きしめてくれるのでした。その瞬間に確かな温もりと、会長の優しい匂いを感じることができました。

 そう、12月25日は私の誕生日なのです。午前0時を過ぎても、私を包み込む魔法が解ける気配はありませんでした。

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