Section39 気付けばずっと昔に

 いつも来る、


 いつものカフェ、


 いつもと同じ席、


 そこは窓際の席だった。


 ただなんの意味もなく、この窓から眺める風景が好きだった。


 何がある訳でもない。


 そこにはいつもと同じ空気が流れ、いつもと同じ時間が佇んでいた。


 木の葉は風に揺られ、道を歩く人々は肌寒そうにコートの前ボタンに手を掛けている。


 僕はと言えば、煙草の煙をくゆらしているだけ。


 そこには、なんの意味もなかったし、なんの意味も与えてはいなかった。


 ただそこにあるのは、


 決まりきった習慣の中で行われる、ひとつの情事に過ぎない。


 僕はそれらを眺め、煙を口から吐き出した。


 いつだったか、


 まだ僕が生きていた頃の習慣。


 今ではそれさえ、懐かしい。


■古びた町の本屋さん

http://furumachi.link

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